「藤野さん、一度、病院で検査を受けてください」

 半ば怒るように、晃光は強くそう言った。

 通夜の準備もこれからだという病院の一室で、いったい何を言い出すんだと父や従業員は答えたが、晃光は引き下がらなかった。

「最近体調がよくないでしょう? 自分でも何か予兆しているはずだ、だから『迎えに行くから』と縁起でもないことが言えた。……一番最後に検査を受けたのはいつですか? ここ最近で、ずいぶんと痩せましたよね?」

 父の疲れ切った顔に、ふっと不安の影が過ぎった。

 そういえば最近、と思い当ったのは香澄だけではなく、社員たちもそうだった。

 食の量は全く変わっていないのに、香澄の父はずいぶんと体重が落ちていた。もともと痩せ型ではあったが、頬がこけるほどのものではなかった。

「ははあ……よく見ているものだなぁ」

 そう、南原さんが初めて感心した声を上げた。

 晃光は冷静なまま首を横に振った。一つ一つの動作がさまになるのは、洗練された美しさが彼の容姿に完成されているからだろうか。

「友人に医者がいますから」

 晃光は、真剣な声でそう答えた。