「そしてこれが、僕の指輪だ。同じななつ星の柄、一目でお揃いだと分かるだろう?」

 彼は自分の分の指輪を取り出して、自身の左手の薬指にやった。手を上げて、香澄のものと見比べさせる。

「晃光さん……」
「きちんとした婚約指輪を贈るその時には、高い物だとか言わないでくれるね?」

 茶化すように笑い掛けられた。

 その笑顔を見ていると、恋人ではない新鮮な関係がお互いの間に築かれているような気持ちが込み上げた。初めて、お互いとお互いの心が自然と繋がったような居心地の良さがある。

 香澄はそのとき、ふと、未来の自分の片りんを見た気がした。

(――私たちは本来、本当だったら出会わないはずの二人だったのではないかしら)

 偶然、お互いという出来事で線と線が混じり合っただけで、その先の未来は、交わることがなく続いている――。

 そんな思いが、脳裏をかすめた。

 きっと晃光の隣には、彼に相応しい別の女性が立つことだろう。

(そしてそれは、私ではない……)