「君がものすごく人見知りなのは、この数カ月でよくわかった」
「……はあ」

 ものすごく人見知り、で落ち着いた彼がすごいなと思った。

 香澄は確かに人見知りはあるけれど、気が緩められないのはデートをしている相手が晃光だからであり、彼と移動している間は女性たちの怨念がこもった視線が怖くて俯いているのだ。

「でもね、誰にも盗られたくないんだよ。だから、僕と正式に婚約してくれないか」

 その言葉に、香澄は心臓がぎゅっと縮まった。

 現在は、お見合いの席で『ひとまず婚約さしましょう』と桜宮家が了承し、交際している状況だった。正式な婚約ではない。

「君が僕を知って納得してくれるまで、結婚は待つから」
「で、ですが……」

 それでも香澄がうろたえると、晃光は眉を下げてはじめて弱気な笑みを浮かべた。

「君との未来が欲しいんだ」
「未来……?」
「そう。君の隣に、僕がいる未来。いつの日かわからない未来の君の横には、僕がいて欲しいと思っている」