晃光は、金銭感覚もケタ違いだった。

 後々のことを考えた香澄は、贅沢過ぎるほどの金銭が絡むのを拒んだ。

「あのホテルのディナーも素晴らしいんだが」
「いえ、あの、私は慣れなくて、その……落ち着ける場所がいいのです」

 私のことは、ちょっとした遊びなんでしょう――。

 なんてことは晃光自身に言えるはずもなかった。どうにか説得して、カフェやファミリーレストランでデートを重ねた。

 晃光の携帯電話には、ひっきりなしに電話がかかってくる。

 話題を振るのも彼なものだから、結局、二人がまともに会話を続けることはあまりないのでは、というのが香澄の印象だった。


「やっぱり、香澄のことが好きだ」


 だが、その年の冬、晃光は二度目のプロポーズをしてきた。

 香澄は、どうしていいかわからなくなった。お互いのこともあまり知らない状況が続いており、桜宮家側の都合もあって、まだ十回も会えていなかったのだ。