そして、とうとう香澄の番が来た。

 名前を呼ばれた際、心臓が口から飛び出るのではないかと思った。大理石の会場から和室に通されたとき、――香澄は初めて桜宮晃光を見た。

 異国の血が混ざっているという母親譲りの栗色の髪は、光に透けて黄金色に染まっているように見えた。白い顔は、芸術品のように美しい。

 ただ、美しすぎて、無表情だと横顔からは私情が読めなかった。

 彼女が名前もよくわからないブランドのスーツに包まれた身体からは、自然と自信が湧きだしているのが見て取れた。

 彼の顔は、女のようにも見えた。

(髪も、私のものより柔らかそうだわ――)

 香澄がそんなこを思いながら向かいの席に母と向かっていると、ふと、眉根を寄せた晃光がこちらに視線を向けてきた。

 見つめ合ったのは、数秒もなかっただろう。

 それなのに、香澄にはずいぶん長く思えた。

 こちらを振り向いた晃光の鋭い瞳が見開かれ、整った顔立ちに人間味のある幼さが差す。彼は二回ほど瞬きを繰り返すと――形のいい唇に小さな笑みを浮かべた。