桜宮の次男が、副社長に収まったという知らせは、年が明けた新聞で大きく載せられた。

「一気にいい女が集まるだろうな」

 新年会の集まりで南原さんは皮肉を叩き、母は眉根を寄せた。

「もういい加減に決まったんじゃないの」

 そう言った彼女の横顔に、不安がいくばくかは残っているのを感じのだろう。付き合いの長い四十三歳の社員が相槌を打った。

「オーナーは気にしすぎですよ。だって、香澄ちゃんは確かに可愛いけど、よりどりみどりの美女の中にいたら、ねえ……」
「御曹司だってんだから、政略結婚さ。香澄ちゃんは当てはまらないよ」
「誤送かもしんねえぜ?」
「うちの香澄のほうが一番可愛いんだぞ!」

 父はすっかり酔った口調でそう言った。場に「たしかにそだ!」とドッと笑いが起こった。

 香澄は、母譲りの整った小さな顔をしていた。けれど美人と評された母のように秀でて目を引くものはなく、今年で二十歳を迎えるにしては全体的に幼い。