書類の整頓を任せられるようになっていた香澄は、そのそばで作業を続けながら、私がここを守っていけたら、と切なくなった。
すっかり歳を取った社員たちも、母も香澄も、古くなっていく藤野の会社がもう長くないことを悟っていた。
会社の後見人もおらず、新しい人間に業務を引き継ぎしたところで近代社会で以前のようにやっていけるとは限らない。香澄の父が築いた人望があるからこそ、食うに困らない仕事が舞い込んでくるのだ。
「香澄ちゃん、俺たちは、この会社が大好きだよ」
――きっと、ずっとね。
一番高齢の南原は、六十歳も目前となっていた。しわだらけの手で頭を撫でられたとき、香澄はそのまま泣いてしまいたくなった。
年越しの大掃除は、毎年の如く従業員とその家族が駆けつけて、皆で丁寧に社内外をくまなく清掃した。
通りかかる人に声をかけながら、古びた外壁もきれいに磨き上げる。地元には昔馴染みの親しい人たちも多く、気軽に声を掛けられると寒さも拭われるような暖かさに包まれ、皆汗だくになりながら「熱いねえ」なんて言い合った。
すっかり歳を取った社員たちも、母も香澄も、古くなっていく藤野の会社がもう長くないことを悟っていた。
会社の後見人もおらず、新しい人間に業務を引き継ぎしたところで近代社会で以前のようにやっていけるとは限らない。香澄の父が築いた人望があるからこそ、食うに困らない仕事が舞い込んでくるのだ。
「香澄ちゃん、俺たちは、この会社が大好きだよ」
――きっと、ずっとね。
一番高齢の南原は、六十歳も目前となっていた。しわだらけの手で頭を撫でられたとき、香澄はそのまま泣いてしまいたくなった。
年越しの大掃除は、毎年の如く従業員とその家族が駆けつけて、皆で丁寧に社内外をくまなく清掃した。
通りかかる人に声をかけながら、古びた外壁もきれいに磨き上げる。地元には昔馴染みの親しい人たちも多く、気軽に声を掛けられると寒さも拭われるような暖かさに包まれ、皆汗だくになりながら「熱いねえ」なんて言い合った。