「…うっ、うぁ、」
勇平さんに貰った、もう形見になるかもしれない人形を大切に持って、葉子ちゃんは泣いていた。
…アキさんは、何時出征されるのだろうか。
出征して欲しくない。生きて欲しい。
…なんて、叶わない願い。
「セツちゃん…セツちゃん……」
「大丈夫、必ず勝つよ」
大丈夫。
葉子ちゃんにも、私にも言い聞かせるかのように繰り返した。
何分経ったんだろう。
葉子ちゃんは目を真っ赤に腫らしてるけど、何とか泣き止んだ。
「有り難う、セツちゃん」
「ううん。……アキさん……」
「アキ…さんは、何時出征される、の…?」
「…分からない」
「あ、居た居た!葉子ちゃん、セツちゃん!ご飯出来たよ!」
私達を呼びにすずちゃんが来た。
「うん、わかった」
「今まで行くね」
アキさん。
死なないで欲しい。
生きて欲しい。
そう思うのは、我が儘ですか?