「葉子ちゃん」
「…」
「ほら、泣かないで…?泣いたら、勇平さん征けなくなるよ…?」
ぐすぐすと葉子ちゃんは泣く。
何しろ、今日は葉子ちゃんが担当の勇平さんが出征されるのだ。
「だってっ、だって…っ!ひぐっ」
「葉子ちゃん、泣かないで?俺、葉子ちゃんの笑顔が見たいな」
「勇平ざん…!」
「え、ちょ、アキ。どうすれば泣き止むかな」
「知るか」
「勇平さん~!!」
えぐえぐ泣く葉子ちゃんに、勇平さんはおろおろとしていた。
…本当に今日出征される前の風景…??
「うーん…。…あ」
「?」
「これ、俺だと思って大切にしてくれる?」
勇平さんが取り出したのは、ぼろぼろの人形。
「これ…」
「勇平が一から作ったんだ。葉子ちゃんにやるんだって張り切って作ってたよ」
「勇平さん!!!!大好き!!!!」
「…え、」
思わぬ告白に勇平さんは固まった。
葉子ちゃんは気付かない。
一所懸命、涙を拭っていた。
「……俺もだよ」
そっ、と葉子ちゃんの額に口付けをし、勇平さんは敬礼をした。
「第十番隊大尉、楠木勇平!只今より御国の為、敵を撃ちます!必ず、勝ってみせます!!」
「…勇平さ、ん…」
「征って参ります!!」
綺麗に九十度の礼をして、戦闘機に乗り込む勇平さん。
飛び立つ直前、勇平さんは葉子ちゃんに笑顔を向けて、旅立たれた。