「必ず、敵を撃って下さい」
「今までお世話、有り難う。必ず、撃ってみせる。第九番隊山田太郎、征って参ります!」
びっ、と敬礼をして山田さんは戦闘機のある場所へ向かった。
姿が見えなくなり、山田さんのお世話係のすずちゃんは静かに涙を流した。
今日もまた、青空に旅立つ兵隊さん達が三角兵舎から出ていった。
手には、御家族が作られたであろうマスコット人形を持って…。
私達は、兵隊さんを笑顔で見送らねばならない。
泣くなど、言語道断。
私達は兵隊さんの御家族の代わりに、見送るのだから。
「セツちゃん…」
「ん?」
「なんで、国は他の国と戦うの…?もう、やだよ、見送りたくないよ…!」
「すずちゃん…」
ぎゅっ、とすずちゃんを抱きしめる。
私も、本当は見送りたくない。
でも、許されないのだ。
私達は、「なでしこ隊」だから。