リーズは深々とお礼を言って、そのまま部屋を後にしようとニコラに背を向けた。


「──っ!」

 ドアノブに手を掛けた瞬間、強く後ろからリーズは抱きしめられた。

「行かないで」

 リーズは縋るように呟く声がいつもの優しいニコラで思わず涙が出てくる。

(ニコラ……!)

 自分に向けられた優しさも、家族として過ごしたこの生活ももう終わり。
 彼とは別れなければならない。この手を振り払って行かなければならない。
 でもどこへ……?

(私はどこに行けばいいの? ニコラを失って私はどこで何をすればいいの……? ニコラのいない生活なんてもう、私には……!)

 刹那、リーズは強い力で振り向かされてそのまま唇を奪われた。
 優しくて切なくて、でもあたたかい。

「リーズ、傍にいて」
「え?」
「俺にはリーズしかいない。離れるなんてできない。だから……」
「でも、ニコラは王子様で……」
「本当の俺を見て」
「──っ!!」

 その瞳はまっすぐにリーズを見つめて、そして離さない。

「リーズ、改めて言います」

 そう言うと、リーズの元に跪いて言う。