リーズとニコラは再び辺境の地の家に戻ってきていた。
 帰りの馬の上でも部屋に入っても、二人の間に会話はない──

 口を開いたのはリーズだった。

「ニコラ……様」
「様はよしてほしい。今まで通りでいいよ」
「でも、まさか王子様だったなんて、知らなかったとは失礼いたしました」
「構わない、むしろかしこまられるとこまる」

 リーズは二コラに近づくと、俯きながら自分の気持ちを言う。

「妻になるって話、たぶん正式には違うんですよね?」
「え?」
「正直初めは驚きましたが、だんだん一緒に過ごすにつれてあなたのその優しい部分や頼りがいのあるところに惹かれて好きになりました」

 リーズはまっすぐニコラを見つめて自分の気持ちを伝える。

「王子様にはきっと立派な婚約者がいて、きっともうお別れなんですよね? お父様を裁いたことで、ニコラのお仕事は終わりですもんね」
「リーズ……」
「私は、私はあなたに恋を教えてもらいました。家族の温かい愛で支えてくれました。本当にありがとうございました」