「知らんっ! お前はほんと邪魔だったんだ。聖女だからとお前の母さんを娶ったのに、すぐに力尽きて聖女としての回復力を失った」

(聖女……? 回復力……まさか私の傷が治るのって……)

「話はそれだけですか?」
「あ?」
「話はそれだけかと言っている」

 リーズは自分の出自に驚き言葉も出なかったが、隣にふと冷たい気配を感じて振り向く。
 そこには怒髪天を衝く勢いで怒り、拳を握り締めて凄むニコラの姿があった。

「──っ!!」

 その目と迫力に圧倒されて先程まで勢いのあった伯爵も、思わず恐怖心を覚えて本能的に怯える。

「私の妻を捨てた挙句、侮辱するとはな」
「はっ! だからお前に何が……っ!!」

 すると、部屋にいら騎士兵たちが全員その場に跪き、ニコラのほうに身体を向ける。
 その異様な光景に何が起こるのかと、伯爵は怯えて後ずさった。

 ニコラは胸元のポケットからバッチを取り出すと、それを騎士服につけた。

「なっ!!!」

 それを見て伯爵も驚いて尻餅をつく。

「知らなければよいものを……。私は第一王子ニコラ・ヴィオネだ」

 ニコラは堂々とその場で正体を明かす。