「この国で自分の子を捨てることがどのような罪に問われるかご存じですね?」

 この国では身内を捨てる、というのは殺人罪にも値する行為と位置付けられており、重罪であった。
 税関連の罪に加えてその罪も犯したとなれば、一生牢から外には出られないであろう。

 責め立てるニコラに対して、伯爵は余裕の表情を浮かべて笑う。

「はっ! ふふ、お前ごときに何ができる! 騎士ではわしは裁けまいっ!!」

 高らかに笑いながら書類をびりびりとちぎって捨てる。
 これで証拠も何もないと言わんばかりに……。

「そうですか、あくまで改心しないのですね」
「改心? ふざけるな、不正はともかくなんでこんな自分の娘でないやつを育てねばならない」
「え…………?」

 自分を指さしながら吐かれた言葉に何も言い返せず、言われた言葉も理解できない。

(私が、本当の娘じゃない……?)

「お前は知らんだろうが、死んだ母さんの連れ子なんだよ、お前は」
「連れ子……?」
「父上っ! リーズには言わない約束です!」