リーズは兄に久々にあった嬉しさでいっぱいになったが、先程の言葉を聞いてまさか自分がニコラに恋をしているなんて言えなかった。

(ニコラにもまだ言えてない……好きって。でも、私の好きって受け入れられるのかな)

 そんな風に考えていたリーズの横でまだ口論は続いている。

「ブレス、言ったはずだ、リーズは僕の『妻』なんだ。気安く触らないでほしいね」
「勝手に奪っておいて何を言うんだ!」

(そういえば、ニコラとお兄様って知り合いなの?)

 こほんとニコラは咳ばらいをすると、本題に入り始めた。
 二人とも真面目な顔つきに変わり、そしてブレスは何か覚悟を決めたように一つ頷くと、ニコラに告げる。

「我が父、フルーリー伯爵は廊下の突き当りの部屋にいる。頼む」

 その声かけを聞くとニコラを右手を挙げて何か合図をした。
 すると、伯爵邸のまわりから何十人もの騎士兵たちが現れ、一気に玄関から中になだれ込む。

「え?」

 リーズは訳が分からず、ニコラのほうを見つめる。
 すると、ニコラは優しく微笑んだ後に声をかけた。

「さあ、俺たちも行こうか」
「……?」