「起き上がれる? 俺は二コラ。この一体を守る騎士をしている」
「騎士?」

(騎士って確か国民を守る優しい方よね?)

 そんな風に心の中で思っていると、木の器に入って湯気の立った温かそうなスープが差し出される。

「食べられそうならこのスープを飲んでごらん」
「もらっていいのですか?」
「ん? もちろん、行き倒れている人からお金は取らないよ」

 その言葉にリーズは安心してスプーンでひとすくいして飲む。

「美味しい」
「よかった、これくらいしか作れなくてごめんね」
「そんなっ! 十分ありがたいです」

 二コラはリーズがしゃべれることを確認すると、真剣な顔で彼女に問う。

「一つ教えてくれるかい? なぜあの場所にいたんだ? 君のその服から見るにどこかのご令嬢ではないのか?」
「あ……」

 リーズはスープを飲む手を止めて、二コラに少しずつ話始めた。
 自分はフルーリー家の伯爵令嬢であること。
 しかし先月頭を打った影響で記憶喪失になったこと。
 そして父親に捨てられたこと──