「さっき来てくれたって言った時に、俺より先に『シロ』って言った」

 見ると、ニコラは少し口をとがらせて目を逸らしている。
 そんな様子を見たリーズをニコラの顔を無理矢理に自分のほうへと向けた。

「──っ!!」
「もうっ! 私の中ではニコラもシロも大事なの! でも……」

 少しそこまで言っていて自分の中に沸いてくる感情に少し戸惑った。

(あれ……この間まで二人とも大事って思ってたのに、なんだか変……。だって、ニコラのことを優先に考えちゃう)

「リーズ?」
「なんでもないっ! ニコラ、今日は助けてくれて本当にありがとう。来てくれて嬉しかった。それにかっこよかった」
「初めてリーズにかっこいいって言われた気がする」
「そうかしら?」

 二人は目を合わせて笑いあいながら紅茶を飲んで夜通し話をした──


 翌日、ニコラが仕事に出た後のこと。
 リーズはお鍋のスープの表面に映る自分の顔を眺めながら、ぼうっと考えていた。

(なんかざわざわする……今までニコラが仕事に出たときも何とも思わなくて送り出してたのに、なんだか……)

「寂しい……」