「……わかったわ。でもビルを絶対に傷つけないで、それからビルは解放して、もちろん森の入口まで連れて行って」
「ほお、自分を犠牲にしてこいつを守ろうってか? 泣けるね~」

 ビルの服を掴んでいた男は腕を離してリーズのほうにビルを投げつける。

「──っ! ビル……!」

 なんとかビルを受け止めたリーズはぎゅっと彼を抱きしめる。

「さあ、約束だぜ。おとなしくこっちきな!」
「きゃっ!」

 リーズは男に引き寄せられると、そのまま腕を掴まれて抵抗できなくなる。

「話が違うじゃないっ! ビルを森の入り口まで……」
「うるせえ! 自分の状況がわかってねえようだな」

 少し痛い目にあわせてやる、と男が言いながら刃物をリーズに向ける。

「──っ!!」

 もうだめかもしれない、そう思ったリーズだったがいつまで待っても何の衝撃も訪れない。

「……?」

 リーズはそっと閉じていた目を開くと、そこには見知った狼がいた。

「シロっ!」
「(たくっ! こんな輩に絡まれるとは、お祓いでもしてきたほうがいいぞ)」
「なっ! 兄貴ーっ!!」