「リーズ姉ちゃんっ! これでいいか?」

 そう言いながら頭上に青々しく輝く葉をビルは掲げる。

「ええ、それでいいわ! それを10個くらい見つけられると嬉しいんだけど」
「10個っ?! 一個探すのに30分くらいかかったぞ!」
「一個見つけたらその近くにたぶんあるから」

 そんな会話をしながら二人は山菜採りをしている。
 リーズも黙々と木の実を拾っては、ビルをちらっと見て様子を伺う。

(ふふ、最初は嫌だって言ってたけど、結局手伝ってくれるんだから)

 土にまみれるのは嫌だとか、虫が出てくるからとか文句をいくつか言ってキャシーに頼まれた山菜採りをしぶっていたビルだったが、結局は楽しんでやっていた。

(優しいのよね、ビルは)

 おそらくは自分一人だと大変だからと、気を利かせたのだろう。
 そんなところが彼の優しさである。
 口は悪いが結局は手を差し伸べるようなそんな彼だった。

 そろそろ日も暮れて来る頃だから戻ろうか、とリーズはビルに声をかけたが返事がない。
 おかしいと思って、後ろを振り返ると先程までそこにいたビルはいなくなっていた。