「(木の実をとるときはここにまた来るといい)」
「ありがとう、そうする」

 別れの時にも自分を心配してくれているんだな、とリーズはあたたかい気持ちになる。

「ありがとう、シロ」

 シロはその言葉を聞き、少し頷くとそのまま大きな遠吠えをして森に駆けて行った──



 リーズが村に着いた頃にはすっかり暗くなっていた。

(少し遅くなっちゃった……)

 木の実を入れたカゴを揺らしながら、急いで家の中へと駆けこむ。
 さあ、晩ご飯の支度をしなければ、と思ったその時、リーズの腕が強く引っ張られる。

「──っ!!」

 そのままリーズはソファへと連れていかれ、押し倒される。
 口を誰かの手で押さえられてそのまま唇を首元に寄せられた──
 そこでリーズは自分の身体を拘束する犯人がわかった。

「ニコラ……?」
「遅い」

 ひどく低い声で囁かれた言葉にぞわっとするも、手つきはなんとも優しく愛おしいというような甘いもの。

「シロは?」
「……森に……帰ったの」
「そう、じゃあ今日からまた二人きりだ」

 甘く艶めかしい声で吐息交じりに囁くと、そのままリーズの唇をぺろりとなめる。