森の出口に差し掛かった時、突然シロの足が止まったことに気づき、リーズは後ろを振り返る。

「シロ?」
「(ここまでだ、リーズ)」
「え?」

 シロは出会った時と同じように大きな魔獣の狼の姿に変化する。
 わずかに風が巻き起こり、リーズの髪がふわりと一瞬浮き上がった。

「(わたしは森に帰ってチビたちの面倒を見ないといけない)」
「チビ……?」
「(ああ、わたしが森を抜けると若い衆が不安がる。早く帰らなければならない)」

 その言葉を聞いて瞬時に彼には”家族”がいるのだと理解したが、彼からは少し違った答えが返ってきた。

「(実の、ではない。森で住むものは皆家族のようなものだ。チビは私を慕う三つ子の猫だ)」

 狼を猫が慕うと聞き、少し不思議な感覚に陥ったが、逆に言えば仲が良いということなのだと感じた。
 と同時に彼はもう帰らなければならないのだとリーズは悟る。

「(さあ、別れの時間だ。世話になった。感謝している)」
「いいえ、あなたが元気になってよかった」
「(ああ、北の森は人間を襲う魔獣で溢れているから、そちらには行くなよ)」
「うん、ありがとう」