「(リーズ、私はお前を怖がったりしない)」
「──っ!!」

 リーズの脳内にシロの言葉が響き渡る。
 先程の甘えた目とは違い凛として訴えかけるような、そんな目をしていた。

「シロ……」
「(お前は私の命の恩人だ。それに、私は魔獣だ。そもそも人間からしたら普通ではないからな。お前が少し変わった人間であろうと気にせん)」

 シロはそう言ってリーズの肩まで駆け上がると、そのまま頬にすり寄る。

「(むしろ、私を怖がらないところが変だな)」
「変ってっ!!」
「(ニコラは怒っていないぞ、あの小童は拗ねているだけだな)」
「え?」
「(いいや、なんでもない)」

 そう言ってシロは自分用にと用意されたカゴのベッドにささっと向かい、そのまま丸まって寝た。

「もう……肝心なところだけ知らんぷり……」

 リーズはソファから立ち上がって夕飯の準備に取り掛かると、その様子をちらりとシロが見つめた。

「(どちらもまだ子供……幼いな)」

 そんな風にシロは思いながら、再び目を閉じた──