なんとも素っ気ない会話を交わした二人は、そのまま目を合わせることもなく分かれる。
 ニコラが玄関の扉を閉めた後、リーズはブラッシングをする手を止めた──


「くう~ん?」

 リーズは先程とは打って変わってどこかぼうっとしながら玄関を見つめて、ニコラが座っていた椅子に目を移す。

「……嫌われてしまいましたね」

 悲しそうに肩を落として小声で呟いたリーズに、シロがすり寄る。
 まるで元気を出してといっているかのような様子で、何度も頭をリーズの膝にすりつけた。

(あんな態度をとったら嫌われて当たり前ですよね……)

 リーズはそっと立ち上がると、玄関のほうにある姿見で自分の腕を見る。
 シロに傷つけられた傷はもうすっかり跡形もなく消えてしまっていた。
 かなり深くえぐられていたため、跡が残ってもおかしくないのだが、彼女の”ある能力”が原因でそうはならなかった。

(やっぱり、すぐに傷が消えてる……)

 昔からリーズはなぜか傷がすぐに癒えてしまい、傷跡も残らない。
 気味が悪がられるのではないかと思い、まわりの人には言うことができなかった──