フルーリー伯爵領で天候不順が続くのとは打って変わって、リーズたちが住んでいるキュラディア村は晴天に恵まれていた。
 昨年よりもさらに実りをつけた穀物や野菜たちが、畑で今か今かと収穫の時を待っている。

「セリアおばあちゃんっ!」
「あ~リーズかい。おはよう」
「おはよう! 今日収穫できるってほんと?!」
「ああ、夏野菜が立派に育ったよ~畑を一生懸命耕してくれたリーズのおかげだね~」
「おばあちゃんの教え方が上手なのよ!」

 リーズがこの村に来てから数ヵ月が経過し、彼女はだいぶこの村に慣れてきていた。
 村人たちもリーズとの関係をうまく築けており、ここの風土のおかげか、リーズも当初より明るく前向きに成長している。
 畑に足を踏み入れてハサミを野菜の茎部分に入れると、ころんとリーズの手のひらに赤いトマトが入って来た。

「大きいっ!」
「立派だろ~! ここの土地は環境がいいからよく育つんだよ」
「きちんと間引きして栄養をあげたからもあるの?」
「ああ、そうだよ。全部残すんじゃなくていくつかに絞ることで甘く大きいトマトに成長するんだ」