はあはあと言い、顔を真っ赤にしながら命令する。

 書類を再び投げつけるように部下に渡すと、伯爵はさらに自分の机にあった紅茶を部下の顔にかける。

「いいかっ!? お前のせいでこうなったんだ。ワインがお得意様に届けられない状況になってみろ? お前を獣の餌にしてくれるわ!!」
「……ひくっ」

 部下はあまりの恐怖でガタガタを震えており、その場から動けなくなっていた。
 そんな様子を気にも留めずに、伯爵はそのまま部屋を後にした。

 部屋を出て少し歩いたところで、「あ、そうそう」と言って戻って来る。

「ブレスには言うなよ? あいつは変な正義感かざしてうるさいからな。嗅ぎまわれたらめんどくさい」
「か、かしこまりました……」

 そう言って扉を乱暴に閉めると、そのままダイニングのほうへと向かって行った。


 部屋に残された彼がその後、不正書類を内密に持ち出していたことを、まだ伯爵は知らない──