甘い雰囲気を悟ったのか、マスターは何も言わずに黙々と紅茶とケーキの用意をする。
 マスターはここのカフェ経営をして17年目になるベテランで、カフェ経営の他にも村の建設業を手伝っていることもあって、二コラとは顔見知り。
 身体もごついが繊細な作業も得意であるため、カフェの経営もなんなくこなす。
 彼が留守の時は、彼の妻がキッチンに立ってマスター代理として働いている。

「はい、ベリーティーとシフォンケーキ」
「わあ!」
「おお、いい焼き色!!」

 ベリーティーはかなり深い色合いをしており、一見するとコーヒーのようにも見えるが、なんとも甘酸っぱい味と香りを漂わせる。
 そしてシフォンケーキはこのカフェの名物であり、村の皆がこぞって注文する一品。
 焼き加減もさることながら、そのふわふわ具合は自宅のオーブンでは再現できないと評判。

「いただきます。──っ!!!」
「おいしいでしょ?」
「(ふんふん!!)」

 リーズはあまりの美味しさに驚き、目を丸くする。
 そしてすぐさま二口目をほおばると、顔をくしゃくしゃにしながら幸せを表現した。