【長編版】誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる

「一緒にポトフ食べようか」
「ダメですっ! これは焦げちゃってお腹壊しちゃったら大変です!」
「このくらい大丈夫だよ、ほらもったいないでしょ」

 食材がもったいないなんてわざと言っていて、自分の気持ちを第一に思ってくれていることがわかって、彼女は喉の奥がつんとなった。

(幸せってこういうことなのかしら?)

 ようやく日常と呼べる日が始まったような気がして、リーズはほっとした。