ニコラは言いにくそうにしているリーズの気持ちを悟って鍋の方へと確認に行く。
 そこにはいいにおい……ではなく、かなり焦げたようなにおいがして、ニコラは思わず顔をしかめる。
 頑張って作ろうとしたけれど作れなかったものは難しい料理ではなく、簡単なポトフだったがどういう料理かわからなかったリーズは水を入れるのを忘れて食材が焦げてしまった。
 しかし、なんとか努力しようとして、そして何より自分を思って挑戦してくれたことが嬉しく、ニコラはおたまを持ったままのリーズを抱きしめる。

「ニコラ?!」
「リーズ、ありがとう。その気持ちが本当に嬉しいよ。まだうまくいかなくても大丈夫、ゆっくりでいいから」

 包み込むような優しい声にリーズは心がほわっとあたたかくなり、そして同時に二コラのことを愛しく思った。

(もっとニコラの笑顔が見たい。あなたのために役に立てるようになりたい)

 抱き合った二人はゆっくりと身体を離すと、目を見つめて思わず微笑み合った。