「リーズ、戻ったよ」
「あ、おかえりなさい、ニコラ」

 ニコラが仕事から戻るとそこにはキッチンに立つリーズの姿があった。
 家にはないはずのエプロンをしておたまを持ちながら、ゆっくりと鍋をかき混ぜている。

「…………」

 ニコラはリーズのその新鮮な姿に思わず虚を突かれて、ぶわっと顔を逸らす。
 その口からは小さなか細い声で「やばいだろ、その服」と呟いていた。

「ニコラ?」
「い、いや! なんでもない、それより何してるの?」

 するとリーズはちょっと照れたようにもじもじとしながら、唇をぎゅっと結んで言う。

「えっと、お昼に隣のお家にお邪魔してね、その、ニコラのお仕事のこと聞いてたんです」
「俺の?」
「ええ、そしたらなにか私にもできることないかなって思って、キャシーさんに料理を教えてもらったのだけれど……」
「けれど?」