結局その日のうちに星羅は目を覚まさなかった。私は一日だけ検査入院をしてカウンセラーとの予約も申し込むことになった。
翌日、母が迎えに来て帰ることになったが、その前に星羅に会いに行った。先生から目を覚まして通常病棟に移動したことを聞いた。
「星羅、昨日ぶり。」
引きつっていたかもだけど、必死に笑顔を見せた。星羅は呆れながらも少し申し訳無さそうに笑いかけてくれた。
「よう、そっちは元気そうだな。まあ、俺も元気といえば元気なんだけどさ。」
無理しているのは見て取ることが出来た。
「ばか星羅。あんたの彼女は警察に引き渡されたって。ねえ、なんで私のこと助けたの?どうしてそこまでするの?私は星羅が傷つくくらいなら自分が傷ついたほうが良かった。」
私は笑えていないと思う。怒っているし、安心してぐちゃぐちゃな感情に身を委ねているから。
「そんなん当たり前だろ。綾音があんな行動に出たのは俺の責任だし、男っていうのは女を守ることだ仕事だからだよ。それに、俺も、美恋にこれ以上傷ついてほしくなかったから。それだけのことだよ。」
予想外のことの連続で頭が追いつかない。言っていいこととダメなことの区別がつかなかった。気がついたら口を開いていた。
「好き。好きだから、傷ついてほしくなかった。他の女の子のことを気にしてほしくなかった。」
自分が泣きを言っているのかわからなかった。でも、嬉しくて、悔しくて、ついさっきまであった感情が塗り替えられていった。星羅も驚いて言葉を失っていたのだろう。程なくして星羅が口を開いた。
「俺も。俺も好きだ。お前のことが稲崎美恋のことが大好きだよ。綾音と付き合ったのだって美恋のことが好きなのがバレて、未恋のことをいじめてもいいのって脅されて仕方なかったんだ。俺がずっと好きだったのは美恋だけだよ。」
声にならない。まさか、私の好きな人が私のことを好きだったなんて。
「なあ、俺と付き合ってくれないか?」
ここが私の目指した自分の居場所。ずっと憧れていた場所。答えなんて一つしかなかった。
「はい。喜んで。」
 ようやく二人でスタートラインに立つことが出来た。一人じゃなくて二人で。
ねえ、これからどんな物語が出来上がっていくのかな。