星羅に向かって正論をぶつけた私はこころなしか初めて生きててよかったと思えた。だから、私は星羅が不幸になろうと自分のしたいことをしようと決めた。彼が私のことを傷つけてその分助けてくれたように私も彼のことを傷つけて、助けて、後悔して、私自身が成長するための栄養分にしようと決めた。彼のことを好きだと認めて、背中を追うことを決心した。星羅の隣りにいるべきは綾音だとわかったから、私は星羅の背中を追いかけて、背中を押そうと決めた。
 今までは話しかけられなければ会話なんてしなかったし、この先もそれを変えようとは思わない。でも、彼のことを少しでも知ろうと思うようになった。そうやって必死になっていたら、「いなくなりたい」なんて思わなくなった。
 そんなある日、前から陰口を言われていることには気がついていた。でも、隠し通さず言われる日が来るとは思わなかった。もちろん、星羅も知らない。でも、言われた内容には驚きはしなかったけど、言ってきた相手には驚愕した。夢でも見ているのかと思ったくらいだ。だって綾音がいたんだから。
「あのさ、知ってると思うけど私星羅の彼女なんだよね。最近、星羅のことつきまとってるよね?星羅が嫌がってたよ。それに、私だって迷惑なんだよね。つか、気持ち悪い。すぐにやめろとは言わないけど、来週まで続けてたら学年の女子全員であんたのこといじめるから。」
言いたいことを言わせとけばそんなことか。正直な感想を伝えるとそれだった。でも、感想ではなくて、自分の意志を伝えた。
「私だって今自分のやってることが気持ち悪いと思っているけど、辞める気はない。だから、いじめるなら勝手にして。ただ、これだけは言わせて。好きな人のためとはいえ、人のこといじめたり自分のこと棚に上げているやつ以上に気持ち悪いやつなんていないよ。ぶっちゃけていいなら、今の貴方は私と同じくらい気持ち悪いよ。つまり、貴方が上なわけではないし、私が上なわけでもない。同じ立場で、同じ土俵にいることな理解してね。」
なんでだろう。星羅を好きだと認めて、星羅のことを知りたい、助けたいそう思ってから素直になった気がする。
 翌日、案の定靴箱に靴がなかった。別に驚きはしなかった。でも、無反応の私が気に食わないのかいじめはエスカレートしていった。靴は隠すんじゃなくて汚されて返されたり、八つ裂きにされたりした。それ以外にも、掃除用具入れに押し込まれて男子に扉を押さえつけられて拉致されたりもした。最終的には服を脱がされたり捨てられたり、テニスラケットのガットが切られたりして、犯罪行為にも手を染めていた。さすがの私も精神的にダメージを受けた。
 笑わなくなった私を気にかけていたのだろうか、星羅が私が連れて行かれて殴られているところに駆けつけた。
「ふざけんな。お前ら最低だな。」
そう言って私の手を引いて屋上に連れて行った。
「なにがあった?だけにやられた?いつからだ?」
今までにないくらい心配してくれた。私は泣いた。私が本当にいたい場所がどこなのか。それが背中を追うことじゃないと理解したから。気づきたくなかった。気づきたかった。もう、どれが本当の自分かなんてわからなかったけど、星羅の言葉一つ一つが私の涙を増やしていった。
私を助けてくれたこと、頼ってくれたこと、心配してくれたこと、好きだと気づかせてくれたこと。君の行動一つ一つにありがとう。