星羅が綾音と付き合いだして一ヶ月がたった。私はというと星羅と出会う前に戻ったような生活をしていたが、どこか心に穴が空いているような気がした。原因なんて知らない。わからない。けど、無性に綾音に対して腹が立って仕方がない。もういやだ。
今なら私のことを止めてくれる人もいないから本当にいなくなろうかな。そんなことを頭に浮かんだと思っていたけど、その考えを塗り替えすように星羅の言葉を思い返した。
「助けてほしいならはっきりそういえよ。」
なんで思い出したんだろう。そんなこともうわかってたのに、認めたくなかったんだよ。
 星羅のことが好きだなんて。
 星羅のことを好きだと気づいたあの日から二週間がたった。その間の私は星羅に不幸が訪れていないか気が気でなかったが、幸いにも今のところ大丈夫そうで安心した。そんなことを思いながら屋上に行くと星羅がいた。びっくりした。いやそりゃ普段人といることの多い星羅が一人でいたことにも驚いたけど、なにより星羅が泣いていたからとっさに隠れるくらい驚いた。
「美恋、いるのか?」
ああ、バレてしまった。諦めて姿を表して近づくと、抱きついてきた。なにが起きているかわからなかったが、自然と手が星羅の頭と背中に行っていた。星羅がひとしきり泣き終わったから話してかけた。
「ねえ、どうしたの?話してくれない?」
優しく聞くと星羅は答えてくれた。
「俺さあ、ほんとは笑いたくないだよなあ。でも、一人でいることのほうが嫌で笑っていたら勝手に人が寄ってくるからやめられなくなっちまったんだよね。」
そう呟いた星羅は悲しそうなでも、嬉しそうな顔をしていた。
私は少し安心したと同時になんで無理したのかとても悔しくて腹立たしかった。そして、初めて星羅に向かって怒鳴った。
「はあ!?なに一人前に語ってんだよふざけんじゃねえ!人には助け求めろって言っておきながらお前こそ一人でなに諦めてんだよ!そんなやつに私は助けを求めようと思っていたのかよ!お前も馬鹿だけど、私も十分馬鹿だったよ!」
「ちょ、ちょっと落ち着け。怖いぞ美恋。」
戸惑った様子で話しかけてきた。でも、そんな様子お構いなしに私は言い放った。
「人に助けを求めてほしいなら、自分も人に助けを求めろよ!」
私は言いたいことを言えてすっきりした。
「言いたいことを言わせてくれてありがとう。我慢はよくないからね。」
私はそう言って帰った。