海よりも空よりも蒼い空に、真っ赤に染まる満月が浮かんだ夜、私は生まれた。
 
 始めは、誰もが私の誕生を心待ちにしていたという。

 だが、私が母ー当時の皇后ーの腹から出た瞬間、集まっていた者たちは揃って息を呑んだらしい。
 
 なんでも、母に仕えていた女房の手にいた私は、闇よりも深い黒髪を持っていたから。

 私が生まれた一族は、代々銀髪の子しか生まれなかったという。

 だから、この国は「銀の国」とも呼ばれていた。汚れなき純銀の国だと。

 誰もが月よりも美しい銀色に光る髪の毛を持つ中、私だけが、まるで正しさの中に紛れ込んだ間違いのように黒髪だったのだ。

「この子は呪われている!」

 誰かがそう言った。そして、その話は水面に波が連なるように人々に知れ渡っていった。

 私を産んだ母は嘆いた。父は悲しみに暮れ、そして怒った。

 銀の髪を持たない子など、一族の仲間ではない。

 当時の皇帝であった父はそう見なし、私を宮殿から追放したのは、私が5歳の時のことだった。