「奏?」
「なぁに?渚、なんかあった?」
「なにかあった?じゃないよ!奏は病気って分かって、余命宣告されて悲しくないの?寂しくないの?」
あぁ、言ってしまった。
でも、絶対に悲しいはずだ。寂しいはずだ。だって奏だもん。
「え?何言ってんの。もう僕は昔の僕じゃないんだからさ。大丈夫だよ」
やっぱり。そう言うよね。
でも嘘でしょう?私には嘘ついてますって顔に見えるよ。
「嘘でしょ?本当のこと言って。奏はこんな嘘をつく人じゃないって知ってる。ほら、奏。少しくらい弱み見せてくれてもいいんじゃない?」
「渚...」
「うん。本当はね、すごく怖いんだぁ。悲しいし、死ぬの怖いし」
「うん」
「寂しいし。だってさ、病院行ったらいきなり余命半年って言われたんだよ。そりゃ誰でも怖いでしょ?」
奏は昔と変わらずに目に大粒の涙を溜めて震えながらそう口にした。
「なんで僕なの?他にもっと人がいるのにさ。世界には78億人くらい人がいるんでしょう?じゃあ僕じゃなくても良かったじゃん!」
「うん。そうだよね。でも奏、もしかしたらこれは奏にしか任せられなかったのかもしれないよ?」
「どういうこと?」
「奏にしかこの辛さは乗り越えられなくて、奏にしか今の幸せを充実して過ごせないのかもしれない」
「そうなのかなぁ?」
「そうかもよ?」
「じゃあさ、奏こう考えてみて?」
「もしもこの病気が奏じゃなくてまだ産まれたばかりの赤ちゃんに罹ってしまったら?」
「それは僕が変わってあげたい」
「そう思うよね?そう思う気持ちは誰だっておなじだよ。」
「誰だってなんで僕なの?私なの?って思うよね?それでも自分になってしまったのはもしかしたら自分なら誰かの役に立てるかもしれないからだよ。」
お、奏が泣き止んでくれた。
「そっか!じゃあ僕頑張るよ!」
「誰かのために渚のためにね。」
良かった。奏、笑顔になった。
「その代わりに渚約束して欲しいことがあるんだけど...」
約束?
「なに?」
「えっとねぇー...」
「僕が死ぬその時がくるまでずっとそばにいて欲しいな。なんて!嘘だよ!」
え〜それでもよかったのに
「本当は、僕が死ぬまでに僕がやりたかったことを全部やって欲しい。」
なんて、なんて悲しい願い事なんだろう。
きっと、これが1年前に言われたのなら私は泣いていただろう。
「分かった。でも奏も早死にしちゃだめだよ」
「うん」
「ゆびきりげんまん嘘ついたら針千本のーますゆびきった!」