忙しいのに元の世界に戻れる方法を考えてくれ、図書館に通いつめて色々な本を読んだ。
シャネード様も自分のことのように調べてくれる。
今日は二人で図書館に来ている。王宮の中にあり、月曜日は国民にも一般開放されているそうだ。
国内外の本がありとあらゆるところから集められていて、読書が大好きな私にとっては幸せな空間だ。
文字を読むことができなかったが、シャネード様がゆっくりと教えてくれて、読むことができるようになっていた。
それでもまだわからない単語があると、近づいて指をさして尋ねる。
「これは、朝日が上がったらという意味だ」
「なるほど」
「セイラ。元の世界に戻れる方法を探しているんだぞ。なんで恋愛小説なんて読んでいるんだ」
「面白いんですよ」
呆れた表情を浮かべられるが、 私はにっこりと微笑んでごまかした。
「シャネード様は恋をしたことがありますか?」
「ない」
シャネード様は、いつも難しそうな顔をしている。
筋肉がモリモリ付いているので怖がられてしまうこともある。野獣のようだ。
でも心は優しくて、異世界から来た私のことも差別することなく接してくれる。
体が大きい彼は私を膝に乗せて、まるで子どもに絵本を読み聞かせるように本の内容を教えてくれた。
こんなふうにまるで子供見たく可愛がってくれるので女性扱いされてないと思ったけど、憧れのキャラクターとこうして過ごせるのがとても幸せ。
今まではゲームのキャラクターとして大好きだったけど、人として私は心が奪われていた。
いつも一緒にいる私たちを見て、メイドは不思議そうな顔をしていた。
「何か言いたいことがあるんですか?」
「いえ。……あの、シャネード様と一緒にいて恐ろしくないんですか?」
「とくに……」
シャネード様はむしゃくしゃしてうまくいかないと、暴れていたり、暴言を吐いたり、お世辞にも好かれる人ではないようだった。
それはなぜかと言うと、若くして父を亡くし自らが皇帝になったからだ。
信じていた人に裏切られたり、まだ若いからといってバカにされたり。
そんな辛い過去があったから、恐ろしい人間となってしまったのかもしれない。
猫じゃらしのパワーなのか、私が愛を伝えたのかわからないけれど、嫌なことは一切されたことがなかった。
「怖くありませんよ。優しいです。いつも国民のことを考えていて素晴らしい方です」
私がまっすぐ見つめて言うとメイドはそんな一面もあるのかと小さな声で呟いてから、目の前から消えていった。