「ごめんなさい。勝手に部屋に入ってきて驚かせてしまいましたよね」
「お前は見たことのない容姿をしている」
「私の名前はセイラです。異世界から来たんです」
信じてくれないかなと思ったけど、彼は真剣な表情をして聞いてくれた。夢の中にいると思ったから包み隠さず話すことができたのだ。
「どうしたら、戻れるんだ」
「その方法がわからないです……。でも、シャネード様にお会いできて本当に嬉しいです! 大ファンなんです。私が元々いた世界で人気の乙女ゲームがあったんですが、そこに出て来ていらっしゃったんですよ。大好きで大好きでたまりませんでした」
それから私は、シャネード様の愛の言葉をペラペラと話した。
恥ずかしそうに頬を赤く染めている。
「好きな食べ物はお魚。そして甘いものも大好きなんですよね? お気に入りの場所は東にある美しい湖。私も一度行ってみたいと思ってたんです」
「俺のことをよく知っている。まるで予言者みたいだ」
「それとはちょっと違うんですけど……。でもよく知ってますよ。人に心を開くのも苦手なんですよね?」
「こういう立場だ。簡単に心を開くわけにはいかない」
こうして話しているのも夢だと思った。
眠って目が覚めたら元の世界に戻っている。
「まあ、縁があってこうやって二人で話をしているのだから、おもてなしをしたい」
「いいのですか?」
「セイラの話を聞いているとこちらまで愉快な気分になってくる」
せっかくだから楽しもうと思って、一緒に過ごさせてもらうことにした。
美味しいお酒を飲んで、豪華な食事まで振る舞ってくれた。
食事をする姿は、それまた美しい。
神々しくて、何時間でも見ていられると思った。
この楽しい時間が永遠に続けばいい。
私の人生でこれほどまでに楽しい時間はなかった。
だんだんと眠くなってくる。たぶん眠ってしまったら元の世界に戻るだろう。
「セイラ、眠くなってきたのか?」
「はい。楽しいひと時をありがとうございました」
「こちらこそ。ゆっくり眠ってくれ」
まぶたが重くなって、眠気に勝てず眠ってしまった。