正式に国民に結婚が発表され、私は婚約者となった。盛大な結婚式が開かれる予定だ。
婚約の発表会では、私が国民に受け入れられるように、一部の貴族を招待して、私の考案した良品を振る舞った。
日本人だった知識が役に立ったようで、否定的な意見の人も料理を口にすると瞳を輝かせて受け入れてくれたのだ。
「素晴らしい。これは我が国の武器になるかもしれません」
「そうだろう?」
シャネードは満足そうに相槌を打って返事をしている。
私の近くにいる人だけが料理に感動しているのかと思ったが、この様子を見ると本当に武器になるかもしれない。
そうすれば呪いを解いて、本来の姿を取り戻せる可能性がある。
これは国として重大な事項だ。
「たくさんの人にレシピを覚えてもらい、料理を国の重要文化財としたい」
シャネードが自分の気持ちを集まってくれた貴族に伝えていく。
「それが他国に広まっていき、レシピを知りたいと言われたところで、呪いを解く方法を知っている国と交渉ができると思うのだ」
一人の貴族が食事をする手を止めて拍手を送った。すると次々と賛同の拍手が沸き起こったのだ。
同じ気持ちになってくれたのは嬉しかったが、私のプレッシャーがどんどんと大きくなっていく。
国内外に喜んでもらえる料理を考えて作ることができるだろうか。
これからが大変な毎日になっていきそうだ。
生まれてきた赤ちゃんは、なるべく自分の手で育てていきたいし。
でもレシピも考えなければいけない。
「期待して待っていてくれ。愛する妻をこれからもよろしく頼む」
大勢の前で紹介された私は笑顔を浮かべていることしかできなかった。