☆2
――8月24日
暑い。
いい人に巡り会いながら、私は移動を続けている。
お腹が大きくなってきて大変だけれど、順調だ。
可愛い赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみ。
それと同時に、仕事を見つけてちゃんと育てていけるのか、不安もある。
しかし覚悟を決めたのだから頑張らなければいけない。
頑張れ、私。
そこで日記は終わっていた。
「はぁ……」
私は深い溜息をつく。
日記を読んで、どんな日々を送っていたかを思い出した。
禁断の恋をして子供を身ごもってしまい、そして逃亡。お腹の子を育てながら移動している中、事故に遭って、助けられた。
まるでジェットコースターみたいな人生だ。でも命を助けられただけでも感謝をしよう。
体は回復して、起き上がって食事を摂ることもできている。
お言葉に甘えてしばらくの間は、ここで過ごさせてもらうことにした。
九月になり、おそらくあと二週間くらいで子供が生まれてくるはずだ。
生まれてくる子供に、猫の耳や尻尾が生えているのだろうか。
もし、シャネードにそっくりだったら、国外逃亡しなければ命の危険性もある。
考えれば考えるほど頭の中がごちゃごちゃしてきた。
「辛い思いをしたんだね」
医者が声をかけてくれた。
「私の存在が知られてしまったら、殺されてしまうかもしれません」
「そうじゃな」
「そんな私をかくまっていたとわかったら、先生も危ないんじゃないですか?」
「その通りだ」
「ではなぜ面倒を見てくれたんですか」
彼は優しい表情を浮かべて頷く。
「命の尊さを知っているからじゃ」
「……っ」
胸がズキンとした。
そっと、お腹に手を当てる。胎動を感じる。お腹の中の子供は、どんなことがあっても生まれてきたいと、訴えているようだった。
「僕は医者なんだ。一つでも多くの命を救いたい」
「……ありがとうございます」
愛する人の子供を産んで、元気に育てていきたい。
私は強く決意したのだった。
「シャネード様は冷血だと言われている。見つかったらひとたまりもないだろう」
「そうなんですか? 日記の中ではすごく優しい人だったように書かれていましたし、いい人でしたよ」
「それは恋人だったからじゃ。正妻じゃないあなたが子供を妊娠したと知ったら……あぁ、恐ろしい」
震え上がっている様子を見ていたら、絶対に見つかってはいけないと思った。
でも、思い出したシャネード様は、誰かを殺すような人ではない。
たしかに仕事をしている時は厳しい顔をしていて、人を寄せ付けないオーラを放っていたが、本当に穏やかで素敵だった。
――8月24日
暑い。
いい人に巡り会いながら、私は移動を続けている。
お腹が大きくなってきて大変だけれど、順調だ。
可愛い赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみ。
それと同時に、仕事を見つけてちゃんと育てていけるのか、不安もある。
しかし覚悟を決めたのだから頑張らなければいけない。
頑張れ、私。
そこで日記は終わっていた。
「はぁ……」
私は深い溜息をつく。
日記を読んで、どんな日々を送っていたかを思い出した。
禁断の恋をして子供を身ごもってしまい、そして逃亡。お腹の子を育てながら移動している中、事故に遭って、助けられた。
まるでジェットコースターみたいな人生だ。でも命を助けられただけでも感謝をしよう。
体は回復して、起き上がって食事を摂ることもできている。
お言葉に甘えてしばらくの間は、ここで過ごさせてもらうことにした。
九月になり、おそらくあと二週間くらいで子供が生まれてくるはずだ。
生まれてくる子供に、猫の耳や尻尾が生えているのだろうか。
もし、シャネードにそっくりだったら、国外逃亡しなければ命の危険性もある。
考えれば考えるほど頭の中がごちゃごちゃしてきた。
「辛い思いをしたんだね」
医者が声をかけてくれた。
「私の存在が知られてしまったら、殺されてしまうかもしれません」
「そうじゃな」
「そんな私をかくまっていたとわかったら、先生も危ないんじゃないですか?」
「その通りだ」
「ではなぜ面倒を見てくれたんですか」
彼は優しい表情を浮かべて頷く。
「命の尊さを知っているからじゃ」
「……っ」
胸がズキンとした。
そっと、お腹に手を当てる。胎動を感じる。お腹の中の子供は、どんなことがあっても生まれてきたいと、訴えているようだった。
「僕は医者なんだ。一つでも多くの命を救いたい」
「……ありがとうございます」
愛する人の子供を産んで、元気に育てていきたい。
私は強く決意したのだった。
「シャネード様は冷血だと言われている。見つかったらひとたまりもないだろう」
「そうなんですか? 日記の中ではすごく優しい人だったように書かれていましたし、いい人でしたよ」
「それは恋人だったからじゃ。正妻じゃないあなたが子供を妊娠したと知ったら……あぁ、恐ろしい」
震え上がっている様子を見ていたら、絶対に見つかってはいけないと思った。
でも、思い出したシャネード様は、誰かを殺すような人ではない。
たしかに仕事をしている時は厳しい顔をしていて、人を寄せ付けないオーラを放っていたが、本当に穏やかで素敵だった。