「咲桜―、これに名前書いてー」

ぴらっと顔の前に紙が突き出された。

「頼? なにこれ」

「いいから。名前書くだけで。あと笑満も」

放課後になって帰り支度をしていると、いつの間にか教室からいなくなっていた頼が帰ってきた。

二人して首を傾げたけど、言われたとおりに署名した。笑満も続ける。

「よし。んじゃ行くか」

「「どこに?」」

「旧校舎。顧問の承諾もらって、生徒会に提出すれば終わりだったかなー」

雑な返事をしながら、頼は自分の鞄を手にして教室を出て行こうとする。

「え、なに、顧問って」

追いかけながら問うと、頼は「今はひみつー」と教えてくれなかった。

笑満と顔を見合わせる。頼がこんな行動力を発揮するなんて――テンションが高くはないから、興味ある対象を見つけたのではなさそうだ。

ではなんでこんなに行動的なんだ? 本校舎から大分離れたところで、頼はやっと口を開いた。

「神宮先生って部活の顧問とかしてないじゃん?」

「ん? ああ、そうだね」

「んだから、俺と咲桜と笑満で部活作って神宮先生を顧問にしたら、学校で堂々と逢ってても何も言われないだろ」

「―――」

それって

「それ、部活の申請書なの?」