風邪症状では熱が一番に出る。
どういう理由か、降渡が言う通りなのか、ひきやすい癖に治るのも早い。
熱が最初に出るから発散されてしまうのか? 大体半日もあれば治る。
だから今まで『風邪をひいている』自覚がなくて、この前咲桜には怒られた。
「とにかく、今日はお前も夜歩き禁止。ふゆには連絡しとくから、行ったところで蹴っ飛ばされて強制送還だ。諦めろ」
と、素早くスマホをいじる降渡。非難めいた視線が送るが、体調悪いときくらい寝てろと無視された。
「そうだ遙音。今度お前も龍さんとこ来いよ。なんかこの前愛子来たらしいぜ。あいつ出禁にされてたのに」
「春芽さん何やったんだよ」
「店の客と喧嘩」
遙音が半眼で見るのを流して、降渡はひらりと手を振った。
遙音は、吹雪を『春芽』、愛子を『春芽さん』と呼び分けている。
「ちゃんと寝ろよー」
「お前がいねーと学校で頼が咲桜に何かすっかもしんねーからな」
恐ろしい忠告を生徒から受けて、押し黙った。
二人が出てから、……一応鍵をかけた。意味なし幼馴染が二人ほどいるけど。
言われたとおり、風邪薬を飲む。食事は摂ったから大丈夫だろう。
なんとなくローソファに座り込んで、中空を見つめた。
今日、初めて知った話。在義さんが養子って……。
最近のこと、色々と衝撃ばかりな毎日な気がする。その中でも今日は色々と起きている。
咲桜の辛い告白は、マザコンがおかしな方向に進んでいて頭の中でごちゃっとしてしまい整理出来ていない。
…………。
咲桜が近所で虐げられているなんて、あの娘バカとお隣の咲桜バカが赦さないだろう。
もしも咲桜に頼られることがあったら全力で解決する。
望んでもいいのなら――という解決法がひとつ、ある。
実行はまだ不可能そうだが。