俺達3人はアバンス商会に寝具を買いに行った。

 アバンス商会に入ると丁度、アイザックさんがいた。
「これは、これはエリアス様にオルガ様。そ、それに疾風…」
「ウゥッン!!」
 アリッサさんを見て、アイザックさんは驚いたように何かを言おうとした。
 しかしアリッサさんの咳払いが、それを遮った。

「こ、これは冒険者ギルドのアリッサ様まで、本日はどの様なご用件で」
「寝具を3人分、買いに来ました」
 俺が代表して言った。

「3人分でしょうか?」
 アイザックさんが、怪訝そうな顔をしている。
「3人で住むことにしたのさ」
 オルガさんが答える。

「さ、3人でですか?それは、それは…」
 それは驚くだろう。
 冒険者でEランクの俺がAランクのオルガさん、受付のアリッサさんと住むというのだから。

「これは皆様、先見の目がおありで。きっとエリアス様は、いずれ名を残されるでしょう」
 何を言っているんだアイザックさん?
 
「あぁ、そうだな。エリアスは、それまで私達で大事に守って行かないと」
 オルガさんが、力強く言う。
 あぁ、やっぱり。
 俺は誰かに守られないと、やって行けないくらい弱いという事か…。

「そうだ、エリアス。アイザックさんに見てもらいなよ。お前が造った木工家具を」
「木工家具でしょうか?」

「あぁ、こう見えてもエリアスは、木工家具が作れるんだ。ほら家にあるやつと同じものを1セット持っているだろう、エリアス見せてあげて」

 なにを言っているんだオルガさんは?
 仕方なく俺はアイザックさんに背を向け、見えない様にストレージの中で『創生魔法』を使い家具を創って行く。

 ストレージ内で作業をしている時は、パソコン画面の操作と同じになる。
 目の前の空間をタップしながら目を動かしている。
 傍から見たら『壊れた』と思われるからだ。

 俺はベッド、4人掛けのテーブル、椅子4つ、タンス、三面鏡ドレッサーと椅子のセット空いているスペースに出した。

「こ、これは…」
 アイザックさんは、家具に驚いている。

「この家具の表面の艶は、なんという見事さか…」
 家具をストレージ内で創る時に、風魔法で表面をツルツルに削っているんだ。

「そしてこの鏡は…」
 するとアリッサさんが自慢げに話し始める。

「これは三面鏡と言って、鏡が前と左右の板に三面に付いているの。そして左右に板を出すと前と左右から、髪型が見えてとても分かりやすいのよ」

「こ、これをぜひ、私に売ってください!!」
 は?なにを?

「分かりました。交渉はエリアス君の秘書である、私アリッサが対応いたします」
 いつから、俺の秘書に?

「私も入るよ」
 そうオルガさんも言いながら、3人で話始めている。

「この家具を定期的に卸して頂けませんかな?」
「いいですよ、それなら柄を少しずつ変えシリーズ化しましょう」
「良いですね、オルガさん。同じものは無いということね」

「そうよアリッサさん、その方が価値があるでしょ?」
「どのくらいのペースで卸して頂けますかな?3~4ヵ月に1度くらいでしょうか?」
「そうね、エリアスは手先が器用だから、月に1度、いいえ2度でも納入可能よ」
「そ、そうですか、それだと値段に困りますな」
「どういうことかしら」
 アリッサさんが聞く。

「3~4ヵ月に1度と、月に2度では付加価値が違うのです」
「あぁ、数が作れない方が高く売れるのね」
「ええ、その通りです」
「それなら、売れたら次を作るのでも良いわよ」
 オルガさんも、それに答える。

「では、そう致しましょう。それで買取の値段ですが…」
「それはないでしょう!」
「では、これくらいで…」
「あと、もう一声!」
「もう、これが限界ですよ」

「「 わかりました!! 」」

 どうやら買取金額が決まったようだ。

「エリアス君、買取金額が決まったわよ。100万で良いわよね?」
 へ?
 アリッサさんが何事も無いかのように言う。

 そんなにもらえるなら、冒険者辞めようかな…。
 今度の指名依頼は王都まで14日くらいで、1日8,000円だから112,000円だし。
 この世界では人件費が安いから、仕方ないけど。


 そして家具は売れたら次を作って納品することになった。
 
「エリアス様達は、どちらの宿にお泊りで?今後の連絡もありますからな」
「あぁ、それなら明日から宿屋ではなく、屋敷に移るから」
 オルガさんが、すかさず答える。
「屋敷を買われたと?」
「『なごみ亭』の並びの屋敷跡だよ」

「あぁ、あの屋敷跡ですか!土地代は安そうですが、改築費が大変そうですな」
「それが改築は、もう終わったよ」
「ええっ、もう終わったと?」
「エリアスは大工仕事が得意で、1人で改築したのさ」

 1人で?

「そ、それは凄いですな。落ち着かれたら、お邪魔してよろしいでしょうか?」
「もちろんよ、いつでも来てくれよ」

 アバンス商会のアイザックさん、オルガさん、アリッサさん3人の間で、話が進んで行く。

 俺は家具を出してから『へ?』しか、声を出していない。
 翻弄される人生か…、なんて。
 この世界に疎い俺の為に、オルガさんやアリッサさんはよく面倒を見てくれる。
 良い出会いがあって良かった。
 



 アバンス商会で寝具を買い、俺達はアリッサさんとそこで分かれようとした。
「これから2人はどうするのかしら?」
「俺とオルガさんは時間があるので、これから果物採取に行こうと思ってます」
「く、果物?!私も行くわ、弓と防具を着るから私の宿屋まで来て」

 そんなに果物が好きなんだ。
「でもアリッサさん大丈夫ですか?森に行くんですよ」
「ギルド職員だからと侮らないで。私はAランクレベルだから」
「そ、そうなんですか?凄い!」
 冒険者ギルドに勤めていれば荒くれ者も多い。
 だからギルマスのように強い人が後ろに控えているだけで職員は安心して働ける。


 それならいいだろうと装備を取りに、アリッサさんの泊っている宿屋に寄った。
 すると宿屋と言うより、立派な高級ホテルの様なところだった。

「冒険者ギルドは、よほど給料が良いんだな」
 オルガさんがアリッサさんに言う。
「昔、貯めたお金であって、そのお金で泊っているのよ」
「へ~、豪華なもんだな」
「まあね。じゃあ、ここで少し待っててね」
 そう言われ俺達はロビーで待つことにした。

 しかしアリッサさんはスタイルが良い。
 身長は163~5cmくらいかな。
 そして胸が…。


 しばらくすると銀色の髪を束ねた、アリッサさんが戻って来た。
 レーザーアーマーを着て、やや大ぶりな弓を持ちいかにもエルフて感じだ。

「お待たせ!さあ行きましょうか!」

 そういうアリッサさんは、とても凛々しく見えた。