翌日、1階で朝食を食べているとオルガさんがやってきた。
「ねえ、エリアス君。どう言うつもりよ」
「何がでしょうか?」
「依頼よ、冒険者ギルドのい・ら・い」
俺がキョトンとしていると、更に言われた。
「もう3日も依頼を受けていないのよ。確かに前回、ウィルムの素材を売って、お金が入ったけどしばらく働かない気なの?」
あぁ、そうだった。
パーティーを組むということは、そういう事になるんだった。
俺が働かなければ、組んだ相手はどうするのか?
一緒に休むのか、ソロでその間やるのかだ。
俺はこの世界に来たばかりで実感がない。
なんだか今でも夢を見ているみたいだった。
だがこれは現実で、ここで生きて行かなければいけないのだ。
そして自分の事しか考えていなかったことに気づいた。
「ごめんね、オルガさん。実は…」
俺はオルガさんに今後の事について話したいと切り出した。
冒険者は危険が多く俺自身が、やっていける能力があるのかわからない。
だから商売をして安定した収入を、得ようと考えていることを話した。
「いいんじゃないか、それで。冒険者なんて所詮は日雇いと同じさ。お金が無くなれば働き、収入があれば休む。半年先はあっても、1年先はわからない。不安定な仕事だからね」
「オルガさん、すみません。せっかくパーティーを組んでくれたのに」
「いいさ、冒険者仕事なんて、いつまでもすることじゃないから」
「ありがとうございます。オルガさん」
「大丈夫、何かあればお姉ちゃんが守ってあげるからね」
あれ?
いつから俺はオルガさんと、姉弟になったんだろう?
「これから、どうするのさ」
「まず俺が作った調味料を商業ギルドに、売り込みに行こうと思います」
「そうか、じゃあまた後でね」
そう言ってオルガさんとは、また後で会う約束をした。
俺達は調味料を売り込むために、商業ギルドへ向かった。
でかい、さすが商人から税金を取っているだけあって建物が体育館並みだ。
これだけ儲かるなら、税率を下げてもいいのでは?
元締めが儲かりすぎてるように思われるのは損だぞ!
ぼったくりだ!
「誰がぼったくりですか!そう言うことは、建物に入ってから言わないでください」
つい脳内思考の延長で、商業ギルドに入ってから受付で呟いてしまった。
周りを見ると忙しい時間を過ぎて人もまばら。
今は10時くらいか。
「本日はどの様なご用件でしょうか?」
「エリアスと言います。新しい調味料を作ったので買取をしてほしいのですが」
「新しい調味料でしょうか?」
「はい、そうです!これを使うと料理が画期的に美味しくなります」
受付嬢はキョトンとした顔をした。
それはそうだよね、そんなこと誰も今までしてないし。
「少々お待ちください」と、一旦奥にさがり、しばらくしてから「こちらへどうぞ」と別の部屋に案内された。
扉を開けると部屋の中には、50代くらいのイカツイ顔をしたおっさんが居た。
「受付のノエルから話は聞いた。まずは掛けて話をしよう」
ノエルさんて言うのか、さっきのお姉さんは。
「私はここのギルドマスター、アレックだ」
「はじめまして、エリアスです」
ギルドマスターのアレックさんは、50代前半の口ひげを生やした人だ。
俺達はソファに腰かけ再度、内容を確認された。
「新しい調味料を作ったので、買取をしてほしいと聞いているが」
「はい、そうです。実際に見て頂けますか?」
俺は首からかけているポーチから出す振りをして、ストレージから『うま味調味料』を入れていない野菜スープ、野菜炒め、肉料理を出した。
ビルさんに頼んで比較ができるように、作ってもらっていたんだ。
ただ、冷めるだろう?て、言われたけどね。
ストレージは時間停止機能付きなので暖かいままだ。
でもそれは言えないから、笑ってごまかしたけど。
ストレージから出した瞬間、アレックさんの目が『キラリ』と光った。
「これは?」
「味見です、先ほど作ってきました。まずは俺の調味料を使っていない、普通の料理からです」
そう言って俺は野菜スープを自分の分と、アレックさんの分を取り皿に分けた。
そして俺からまずは一口。
「今度は新しい調味料を入れ、よくかき混ぜます」
今度は『うま味調味料』を入れ、良くかき混ぜて再度口に運ぶ。
旨い!
それを見たアレックさんも、俺と同じようにする。
そして野菜スープを口に入れると、アレックさんは目を見開いた。
「なっ、なんだ。この味は?!」
驚きの声を上げスプーンを落としそうになっていた。
「『うま味調味料』です」
「『うま味調味料』?何だいそれは」
「ある物から『うま味』だけを取り出したものです。そのため、何にでも合い美味しくなるんです」
そう言いながら俺はストレージから、『うま味調味料』が入った入れ物を出した。
『うま味調味料』に椎茸と鰹節のダシ汁を入れた、合わせダシだからね。
それに野菜も入っているから、出汁も出て更に美味しくなるんだ。
「それは凄いな。で、そのある物とはなんだい?」
「言えませんよ。企業秘密ですから」
「そうだろうな、それで君はこれを売りたいと言うのだね」
「はい、ギルドで調味料を買い上げてほしいのです。そしてそれを作るための、住居兼作業場を借りようと思いまして」
「卸に徹したいと?自分で売るより利幅は減るがいいのかい」
「かまいません。自分で店を開き売る手間や経費を考えたら、商業ギルドに卸したほうが全国的に流通しますから。薄利多売、細く長くできればいいと思っています」
「目先の利益を追う商人が多いのに薄利多売と細く長くか。いい心がけだ。で、いくらで卸してくれるんだい?」
「俺が卸す金額の2倍でギルドが商人に売り、商人がその1.5倍でお客に売る。
最低3倍が、店頭に並ぶ値段でしょうか?」
「ふむ、君とギルドと販売する商人の間で値段を決めたいという事か」
「は、はい、どの店でも手軽な同じ金額で購入できれば買いやすいと思うので」
「価格統一か、そのような考えの商人は今までいなかったよ。この街の中では統一 し、他の街に出す時は移動の経費が掛かるから例外としよう」
「で、いくらで買ってもらえますか?値段がよくわからなくて」
「ははは、欲がないな。では入れ物1つで20,000円でどうだ?」
「えっ!」
「まあ、ま、そうだよな。安いよな。では30,000円で仕入れよう!」
安くて驚いたのではない。高くて驚いたのだ。
原価をいえば蓋付の入れ物を入れても1個当たり500円くらいだ。
それを30,000円とは。
「いえ、そうではありません。高すぎます、2,000円にしてください!アレックさんの言う値段で売ったらお客に売る値段が9,000円の調味料なんて、原価が高くて屋台や飲食店では使ってもらえません。調味料は消耗品!たくさんの人に使ってもらって、リピートしてくれた方が長い目で見ると儲かると思うんです」
「そ、そうか。欲が無いんだな」
「それから商業ギルドについて説明を聞きたいのですが?」
「説明か。ま、普通は受付で聞いてからくるものだが。ま、今回は仕方ない」
そう言いながらも説明をしてくれた。
露店か、店舗型によって税率が違う。
店舗販売ではないので卸業者扱いで、登録料5,000円と売上の10%を毎月ギルドに収めればいいそうだ。
納税は自己申告なので、ごまかす人はいないのか聞いてみた。
明らかに儲かってそうなのに少ない場合は監査が入るが、それ以外は暗黙の了解で大目に見てもらえるようだ。
「だが商品名だが『うま味調味料』は長いな」
「そうですね、では名前を付ましょうか。『味』の『元』と書いて…」
「『味』の『元』と書いて」
「『味元』というのはどうでしょう」
「『味元』か」
「ええ、そうです。『味元』…、『味元』です」
「そ、そうか、(汗)、ほう、良い名だ」
こうして交渉は無事に済んだ。
取り合えず今回は200個を納品する話が決まった。
商業ギルドに払う税金の10%を引いても360,000円。
原価の100,000円を引いても260,000円の利益になる。
ますます駄目人間になりそうだ。
「ねえ、エリアス君。どう言うつもりよ」
「何がでしょうか?」
「依頼よ、冒険者ギルドのい・ら・い」
俺がキョトンとしていると、更に言われた。
「もう3日も依頼を受けていないのよ。確かに前回、ウィルムの素材を売って、お金が入ったけどしばらく働かない気なの?」
あぁ、そうだった。
パーティーを組むということは、そういう事になるんだった。
俺が働かなければ、組んだ相手はどうするのか?
一緒に休むのか、ソロでその間やるのかだ。
俺はこの世界に来たばかりで実感がない。
なんだか今でも夢を見ているみたいだった。
だがこれは現実で、ここで生きて行かなければいけないのだ。
そして自分の事しか考えていなかったことに気づいた。
「ごめんね、オルガさん。実は…」
俺はオルガさんに今後の事について話したいと切り出した。
冒険者は危険が多く俺自身が、やっていける能力があるのかわからない。
だから商売をして安定した収入を、得ようと考えていることを話した。
「いいんじゃないか、それで。冒険者なんて所詮は日雇いと同じさ。お金が無くなれば働き、収入があれば休む。半年先はあっても、1年先はわからない。不安定な仕事だからね」
「オルガさん、すみません。せっかくパーティーを組んでくれたのに」
「いいさ、冒険者仕事なんて、いつまでもすることじゃないから」
「ありがとうございます。オルガさん」
「大丈夫、何かあればお姉ちゃんが守ってあげるからね」
あれ?
いつから俺はオルガさんと、姉弟になったんだろう?
「これから、どうするのさ」
「まず俺が作った調味料を商業ギルドに、売り込みに行こうと思います」
「そうか、じゃあまた後でね」
そう言ってオルガさんとは、また後で会う約束をした。
俺達は調味料を売り込むために、商業ギルドへ向かった。
でかい、さすが商人から税金を取っているだけあって建物が体育館並みだ。
これだけ儲かるなら、税率を下げてもいいのでは?
元締めが儲かりすぎてるように思われるのは損だぞ!
ぼったくりだ!
「誰がぼったくりですか!そう言うことは、建物に入ってから言わないでください」
つい脳内思考の延長で、商業ギルドに入ってから受付で呟いてしまった。
周りを見ると忙しい時間を過ぎて人もまばら。
今は10時くらいか。
「本日はどの様なご用件でしょうか?」
「エリアスと言います。新しい調味料を作ったので買取をしてほしいのですが」
「新しい調味料でしょうか?」
「はい、そうです!これを使うと料理が画期的に美味しくなります」
受付嬢はキョトンとした顔をした。
それはそうだよね、そんなこと誰も今までしてないし。
「少々お待ちください」と、一旦奥にさがり、しばらくしてから「こちらへどうぞ」と別の部屋に案内された。
扉を開けると部屋の中には、50代くらいのイカツイ顔をしたおっさんが居た。
「受付のノエルから話は聞いた。まずは掛けて話をしよう」
ノエルさんて言うのか、さっきのお姉さんは。
「私はここのギルドマスター、アレックだ」
「はじめまして、エリアスです」
ギルドマスターのアレックさんは、50代前半の口ひげを生やした人だ。
俺達はソファに腰かけ再度、内容を確認された。
「新しい調味料を作ったので、買取をしてほしいと聞いているが」
「はい、そうです。実際に見て頂けますか?」
俺は首からかけているポーチから出す振りをして、ストレージから『うま味調味料』を入れていない野菜スープ、野菜炒め、肉料理を出した。
ビルさんに頼んで比較ができるように、作ってもらっていたんだ。
ただ、冷めるだろう?て、言われたけどね。
ストレージは時間停止機能付きなので暖かいままだ。
でもそれは言えないから、笑ってごまかしたけど。
ストレージから出した瞬間、アレックさんの目が『キラリ』と光った。
「これは?」
「味見です、先ほど作ってきました。まずは俺の調味料を使っていない、普通の料理からです」
そう言って俺は野菜スープを自分の分と、アレックさんの分を取り皿に分けた。
そして俺からまずは一口。
「今度は新しい調味料を入れ、よくかき混ぜます」
今度は『うま味調味料』を入れ、良くかき混ぜて再度口に運ぶ。
旨い!
それを見たアレックさんも、俺と同じようにする。
そして野菜スープを口に入れると、アレックさんは目を見開いた。
「なっ、なんだ。この味は?!」
驚きの声を上げスプーンを落としそうになっていた。
「『うま味調味料』です」
「『うま味調味料』?何だいそれは」
「ある物から『うま味』だけを取り出したものです。そのため、何にでも合い美味しくなるんです」
そう言いながら俺はストレージから、『うま味調味料』が入った入れ物を出した。
『うま味調味料』に椎茸と鰹節のダシ汁を入れた、合わせダシだからね。
それに野菜も入っているから、出汁も出て更に美味しくなるんだ。
「それは凄いな。で、そのある物とはなんだい?」
「言えませんよ。企業秘密ですから」
「そうだろうな、それで君はこれを売りたいと言うのだね」
「はい、ギルドで調味料を買い上げてほしいのです。そしてそれを作るための、住居兼作業場を借りようと思いまして」
「卸に徹したいと?自分で売るより利幅は減るがいいのかい」
「かまいません。自分で店を開き売る手間や経費を考えたら、商業ギルドに卸したほうが全国的に流通しますから。薄利多売、細く長くできればいいと思っています」
「目先の利益を追う商人が多いのに薄利多売と細く長くか。いい心がけだ。で、いくらで卸してくれるんだい?」
「俺が卸す金額の2倍でギルドが商人に売り、商人がその1.5倍でお客に売る。
最低3倍が、店頭に並ぶ値段でしょうか?」
「ふむ、君とギルドと販売する商人の間で値段を決めたいという事か」
「は、はい、どの店でも手軽な同じ金額で購入できれば買いやすいと思うので」
「価格統一か、そのような考えの商人は今までいなかったよ。この街の中では統一 し、他の街に出す時は移動の経費が掛かるから例外としよう」
「で、いくらで買ってもらえますか?値段がよくわからなくて」
「ははは、欲がないな。では入れ物1つで20,000円でどうだ?」
「えっ!」
「まあ、ま、そうだよな。安いよな。では30,000円で仕入れよう!」
安くて驚いたのではない。高くて驚いたのだ。
原価をいえば蓋付の入れ物を入れても1個当たり500円くらいだ。
それを30,000円とは。
「いえ、そうではありません。高すぎます、2,000円にしてください!アレックさんの言う値段で売ったらお客に売る値段が9,000円の調味料なんて、原価が高くて屋台や飲食店では使ってもらえません。調味料は消耗品!たくさんの人に使ってもらって、リピートしてくれた方が長い目で見ると儲かると思うんです」
「そ、そうか。欲が無いんだな」
「それから商業ギルドについて説明を聞きたいのですが?」
「説明か。ま、普通は受付で聞いてからくるものだが。ま、今回は仕方ない」
そう言いながらも説明をしてくれた。
露店か、店舗型によって税率が違う。
店舗販売ではないので卸業者扱いで、登録料5,000円と売上の10%を毎月ギルドに収めればいいそうだ。
納税は自己申告なので、ごまかす人はいないのか聞いてみた。
明らかに儲かってそうなのに少ない場合は監査が入るが、それ以外は暗黙の了解で大目に見てもらえるようだ。
「だが商品名だが『うま味調味料』は長いな」
「そうですね、では名前を付ましょうか。『味』の『元』と書いて…」
「『味』の『元』と書いて」
「『味元』というのはどうでしょう」
「『味元』か」
「ええ、そうです。『味元』…、『味元』です」
「そ、そうか、(汗)、ほう、良い名だ」
こうして交渉は無事に済んだ。
取り合えず今回は200個を納品する話が決まった。
商業ギルドに払う税金の10%を引いても360,000円。
原価の100,000円を引いても260,000円の利益になる。
ますます駄目人間になりそうだ。