今俺は冒険者ギルドに来ている。
 朝の混む時間は避け、掲示された依頼書を見ている。
 するとライオンラビット討伐依頼が目に入った。
 冒険者レベル、討伐個体数不問。達成期限なし。

 ほう、誰でも受けることが出来て達成期限の制限もない。これはいい。

 ライオンラビットの肉は美味しく、毛皮は高く買い取ってもらえるようだ。

 依頼書を手に持ち受付に向かう。
 すると後ろから声を掛けられた。

「おい、坊主。その依頼は厳しいぞ」
 振り向くとベリーショートでコンサバな、24~5歳の角刈りのお兄さんが居た。

「えっ、どうしてですか?」
「まだ新人だな。ライオンラビットは臆病で素早いんだよ。弓を構えた瞬間にはもうどこかに逃げていないのさ」
「そんなに早い?」
「だから『達成期限なし』になっているのさ」
「そんな~。でも捕まえられる人もいるんでしょ?」
「だが罠をしかけても中々掛かることはない。だから報酬が高いのさ」
「そうなんですか。ガッカリだな」
「あはは、そうショボくれるなよ。もしやるなら、他の依頼と合わせて受けるのも良いぞ」
「そうか。ライオンラビットは駄目でも、他の依頼で稼げばいいのか」
「そう言うことだ。期限があれば複数依頼を受けることも可能だからな」

「相変わらずコンラードさんは面倒見が良いですね」
 俺担当の受付のアリッサさんが言った。
「あはは!新人は何も分からないから、誰かが教えてやらないと。ほっておくと死んじまうからな」

 どうやら新人の面倒を見ているらしい。

【スキル・鑑定】簡略化発動
 名前:コンラード
 種族:人族
 年齢:25歳
 性別:男
 職業:剣士
 レベル:32

「俺でも出来そうな依頼はないでしょうか?」
「そうですね、Eランクだと常時依頼のゴブリン討伐、薬草採取くらいでしょうか」
「街中の依頼もあるだろう」
「街中ですか?」
「あぁ、街の外の依頼ばかりだと危険が多いからな。街中の依頼は安いが危険が少ない。孤児達や12歳くらいの子供たちが受けるのに丁度いいのさ」
「そんな依頼もあるんですね」
「ま、1件300円くらいだがな」
「う~ん、それだと。やっぱりゴブリン討伐、薬草採取を受けることにします」
「まあそうだな。気を付けて行って来いよ」
「はい、ありがとうございます」

 依頼書を受付に出そうとしたら、
「ゴブリン討伐、薬草採取は常時依頼がでているから、依頼書は後からでいいのよ」
 と、アリッサさんに言われた。
「では、行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
 俺はアリッサさんに手を振り、ギルドを後にした。

 町の外に出て森に入った。
 トロールを倒してからレベルが上がっていた。

「ステータスオープン!」
 名前:エリアス・ドラード・セルベルト
 種族:人族
 年齢:15歳
 性別:男
 職業:創生魔法士(マジック クリエイター)
 レベル:7
 HP 55→80
 MP 105→130
 筋力  22→31
 攻撃力 22→30
 防御力 42→58
 知力  52→67
 器用さ 22→31
 素早さ 42→53
 運   52→61

 状態:良好

【スキル】
 生活魔法(火・水・氷・風・光):LV1
 世界の予備知識:LV1

【ユニークスキル】
 異世界言語
 鑑定
 時空間魔法ストレージ(カスタマイズ可能):LV1
 発展スキル:収納防御:LV1

【メンタルスキル】
 沈着冷静:LV1
 高速思考:LV1
 魅力(人から好感を持たれる。発動しないこともある)

【加護】
 女神ゼクシーの加護
 愛し子

 防御力と知力の伸びが他より良い。
 高速思考で考えストレージの防御技を使ったからか?
 その系列の能力を使うと伸びやすくなるのだろうか。
 今後の課題だな。
 職業、創生魔法士てなんだ?
 そしてストレージの防御技を俺は『収納防御』と名付けた。

 俺は森の中を歩き薬草や果物を探した。
 せっかくストレージがあるのだ。
 売れるものや食べられるものは見つけておかないと。

 そして森の中ほどにブルーベリーの木が密集しており、たくさんブルーベリーが生っていた。
「おぅ、これは大量だ!」
 俺が夢中になってブルーベリーを採っていると、何か争う音がした。

 小走りで音のする方に近づくと魔物と冒険者1人が争っていた。

【スキル・鑑定】簡略化発動
 名前:バグベア
 種族:熊型の魔物
 性別:オス
 レベル:22


 冒険者は女性のようで大柄な剣士だった。

【スキル・鑑定】簡略化発動
 名前:オルガ
 種族:虎猫(トラネコ)
 年齢:17歳
 性別:女
 職業:魔法剣士
 レベル:31

【特徴】
 虎のような縞模様を持つ猫族。
 動きが機敏で攻撃力も高い。
 力だけではなく魔法にも長け、虎族に劣らない能力を持つ。
 
【状態】
 右足に損傷あり


「グワ~~~!!」
 2mくらいあるバグベアが2本足で立ち威嚇する。
 

 剣士が魔法を放ち、その隙に切りかかる。
 先ほどからそれを繰り返している。

 だがいつまでも、それは続かなかった。
 どうやら剣士は足を負傷をしているらしく、動きが散漫になっている。
 そしてバグベアの目を剣士が切った瞬間、痛みのあまりバグベアが右手を払った。
 その払った右手が剣士の左手をえぐったのだ。

「きゃ~~~!!」
 剣士の声が響く。
 剣が飛ばされ、横に倒れた。

 必死で剣士は逃げようとするが動けないでいる。

 駄目だ、やられる。

 冒険者は魔物を倒し報酬をもらうのが仕事だ。
 そのため、助けに入ったつもりでも、横取りと思われることもある。
 だからむやみに助けにも入れない。

 でも死んでからでは、助けられない。

 俺はロングソードを抜き、風魔法を真空状態で剣に纏うようにイメージした。
「助太刀します!」



 うずくまったオルガは、バグベアの右手が大きく振りかぶるのを見た。

 あぁ、もう駄目、やられる。

 だがいつまで経っても衝撃は来なかった。

 目を開けるとそこには美形で黒髪、黒い瞳の少年。
 なぜか人の心を引きつける雰囲気を持つ少年が立っていた。