ミラベルちゃんのおかあさん、エレーナさんは栄養ドリンク、オロビタンZ（ゼェ～～～ト）を飲むと顔色が良くなった。

「エレーナさん、栄養ドリンクの残りと3箱を置いていきます。みなさんと疲れた時に1日1本飲んでください」
「そ、そんな、こんな高価な物を頂く訳には参りません」
「いいですよ、気にしないでください。それからこの村では魔物の解体を出来る方はいますか？」
「えぇ、住人の大半は解体はできますけど…。それがなにか？」
「では、これでも食べて元気を付けてください」
　そう言うと私は家の外に出てストレージから熊の魔物を出した。

〈〈〈〈〈　ドン！！　〉〉〉〉〉

　私は無意識にジャンプし、エレーナさん達も一拍遅れてジャンプする。

「ブラッディベアか？！」
　声がした方を見ると70歳位の老人が立っていた。
「村長様、どうしてここに？」
「大きな魔物が村に入ったと聞いて来てみたのだが…」
「娘のミラベルが森に入った時に魔物に襲われ、助けて頂いたのがこちらのスズカさんです」
「調教師(テイマー)のスズカです。そしてこの子がシルバーです」
「なんと、本当に大きな狼の魔物だ」

　村人達がブラッディベアやシルバーを見て集まってくる。
「ところで確認ですが、この熊の魔物の肉は食べれますか？」
「もちろんです。ブラッディベアのお肉はとても柔らかくて美味しいですよ」
「では村長さん。村の皆さんで食べてください。足りますか？」
「住人は120人くらいの小さな村です。こんな1.5ｍはあるブラッディベアの肉なら十分に足ります」
「よかった。魔石や毛皮などの素材は村に役立ててください」

「おぉ～！！それは凄い」
「今夜はお肉だ！！」
「さっそく、解体だ～！！」
　村人達は悦び解体作業を始める。

「しかしそこまでして頂いても、お礼がなにも出来ません」
「まあ、気にしないでくださいエレーナさん。また遊びに来ますから」
「でもどちらに帰られるのですか？」
「王都です」
「まあ、そんな遠くから…。でも野営の荷物も無いようですけど…」
「シルバーの背に乗れば王都まで、あっと言う間ですから」
「本当だよ、シルバーはとても早いんだよ」
　シルバーに乗ったことがあるミラベルちゃんが自慢げに答える。
「まあ、この子ったら」




「ではまた、会いましょう」
　そう私は言うとシルバーに跨(またが)る。

「スズカお姉ちゃん、またね～！！」
「ありがとうございました！！」
「ハイヨ～！シルバー！！」
『ヒヒィ～～～ン！！』
　シルバーは後ろ2本足で立ち嘶(いなな)く！！
　ミラベルちゃん親子、村長と村人に見送られ私は村を後にした。


「エレーナさん、随分顔色が良くなったみたいだね」
「そうなんです、村長さん。スズカさんから頂いた、栄養ドリンクと言うのを飲んでから調子が良くて…」
「ほう、そんな飲み物があるのか？」
「村長さんも飲んでみますか？」
「いいのかい？」
「もちろんですよ。スズカさんも『みなさんで』、と言っていましたから」
「では、頂こうか」

　栄養ドリンクを飲んだ村長は見る見る内に背筋が伸び、顔のシワもなくなりすっかり若返った。
　エレーナもガサガサだった肌に潤いが戻り、見違えるほど髪にも艶が出ていた。

　それを見た村人達は栄養ドリンクを欲しがった。
　だがスズカが置いて行ったのは村長分を入れて39本。
　村の大人は75人、その内女性は46人。とても足りなかった。

　事態を重く見た村長はこの『栄養ドリンク』というハイポーション以上の貴重な回復薬は、村が管理し大きく体調を崩した時にのみ吞むことが決まった。
　特にエレーナを見ていた、女性陣を納得させるのが大変だったと言う。