薬草を捜して森の奥に進んで行くとシルバーが突然、座り込み私に背中を向けた。
「なに、シルバー。背中に乗れと言うの?」
『はい、その方が早く進めますから』
 シルバーの全長はすでに2m近い。
 狼と言うより馬並みの大きさだ。

「わかったわ。お願いするわね」
グルルルル(任せろ)!!』

 私はシルバーに(またが)り、森の奥にドンドン入って行く。
 あっ!薬草だわ。
 やっと薬草を見つけ私は夢中で薬草を摘む。
 すると馬くらいあるイノシシの魔物が突然、現れ襲い掛かって来た。

「 ガァウ~~!! 」

 シルバーの額にある2本角が光り、風魔法を使い一瞬で首を切断した。

グァオ~(肉~)!!』

「凄いわ、シルバー!!あなたの風魔法は無敵ね!!」
ウォ~ン(もちろんですぜ)!!ウォン、ウォン(姉さん)、』
 すばらく進んで行くと更に薬草を見つけた。
 するとお約束のように魔物が現れ襲い掛かってくる。

 薬草を見つけた…。
 ウサギの魔物が…。

 薬草を見つけた…。
 蛇の魔物が…。

 薬草を見つけた…。
 蜘蛛の魔物が…。

 薬草を見つけた…。
 豚の魔物が…。

 薬草を見つけた…。
 蟹の魔物が…。
 えっ?蟹?!

 どんどん私達を襲ってくる。
 そしてその都度、シルバーが倒してくれている。

 シルバーもお腹がいっぱいのようで倒した魔物はストレージに収納していく。
 私は魔物の解体はできないから、帰りにギルドにお願いしようかな。
 素材と魔石は売って、食べられる肉は持ち帰ろうかな。
 それが良いわ。

 薬草を採取しながら森の奥にどんどん入って行く。
 すると突然、大きな叫び声が森に響く!!

「きゃ~!!誰か助けて~!!」

「シルバー、行くわよ!!」
ワフッ(おう)!!』

 私はシルバーの背に乗り声のした方に向う。
 すると大きな蜂の魔物が3匹おり、12歳くらいの女の子が尻もちをついていた。

「シルバー、頼むわ!!」
ワオッ(まかせろ)!!』
 シルバーの風魔法が飛ぶ。
 しかし蜂の魔物の動きが早くて、中々当たらない。

 3匹の蜂の魔物は女の子から私に目標を替え襲ってきた。

 や、やられる~!!
 魔物が近づいてくる。
 私は思わず無意識に右手を出す。

〈〈〈〈〈 パシッ!! 〉〉〉〉〉

 無意識に出した右手は、1匹の蜂の魔物の顔にヒットし魔物はそのまま沈んだ。

『スズカはアイアンパンチを覚えた!!』
 どこからか、そんな声が聞こえた。
 なに?

 そして2匹目、3匹目とパンチを繰り出す。
 魔物は脳震盪を起こしたのか、そのまま落ちて来る。
 その隙を見てシルバーが風魔法で首を切断していく。

 ふぅ~、シルバーにも苦手な相手がいるのね。
 そんなことをことを思っていると声がした。

「あ、あの。助けて頂いてありがとうございました」
 さっきの女の子ね。
 すっかり忘れていた。

「怪我はない?」
「はい、大丈夫です」
「どうして、こんなところに?」
「母が病気で薬草を採りに来たのですが。途中、キラービーに襲われてしまって…」
 うぅ~~。
 突然、女の子が泣き始める。
 よほど怖かったのだろう。

「もう、大丈夫よ。安心して」
「え~ん。グスン、グスン、」
 私は女の子を軽く抱きしめ頭を撫でる。

「名前は何と言うのかしら?私はスズカよ」
「スズカさんですね。私はミラベルです。あの~、その大きな狼の魔物は…」
「大丈夫よ、私の仲間のシルバーよ。怖がらないで」
「仲間?スズカお姉ちゃんは調教師(テイマー)なのですか?」
「えっ?もう1度言ってみて」

調教師(テイマー)なのですか?」
「そこではないわ。その前よ」
「『仲間』のところでしょうか?」
「その間よ」

「スズカお姉ちゃんは…」
「もう1度、言って」
「スズカお姉ちゃんは…「もう1度…「スズカお姉ちゃんは…「もう1度…「スズカお姉ちゃんは…「もう1度…「スズカお姉ちゃんは…「もう1度…「スズカお姉ちゃんは…「もう1度…「スズカお姉ちゃんは…「もう1度…「スズカお姉ちゃんは…」

 はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、
 ミラベルちゃんが息を切らしている。
『お姉ちゃん』を堪能した私は切り出す。

「村まで私が送るわ。さあ、行きましょう」

 私は倒したキラービーをストレージに収納していく。
 するとミラベルちゃんが目を見開いて驚いている。
 まあ、そうなるでしょうね。

 しかし魔物に襲われ叫び声を上げて、助けが間に合うなんてよくできているわ。
 ほんと、異世界お約束的な出会いね。