朝になった。
 昨晩はする事が無く、明かり用の油は別料金で高く早く寝るしかなかった。

 朝食のため1階の食堂に降りていくと、もう食べ終わる人が殆どの様だ。
 私は厨房前に並ぶとトレーを受け取った。

 昨日と同じ野菜の煮込みと茶色い化石パンだ。
 そしてスープにパンを浸しふやかして食べる。
 不味い!!
 しかし食べないとお腹が…。
 食品ロスなんて考えられないわよね、きっと。

 私は仕方なく食べているスプーンを置き席を立ち上がる。
 さすがにもう食べたくありません。
 店を出て馬小屋に行くとシルバーが嬉しそうに鼻を鳴らした。
 
「クゥ~~~ン!!」
「まあ、甘えん坊さんね、シルバーは」
 そう言いながら私はシルバーの頭をなでる。
 さあ、朝食よ。
 ネットスーパーで牛肉肩ロースステーキを、5kg購入しお皿に入れてだした。

 バク、バク、バク、バク、バク、バク、バク、
  バク、バク、バク、バク、バク、バク、バク、
 シルバーはどんどん肉を食べていく。

 良かった。1匹でもこの食欲なら5匹居たら破産だったわ。
 ごめんねみんな、そんなことを思いながら肉を食べているシルバーを見ていた。

「やあ、朝から豪勢だね」
 声を掛けられ振る帰ると、昨晩会った商人風の男性だった。
「あぁ、おはようございます」
「しかし、これだけの良い肉が手に入るなら、肉屋を開いたらきっと繁盛するよ」
「そうでしょうか?」
「勿論だよ。肉は塩漬けにした肉を(あぶ)って食べたり、水に戻したものを調理している。保存が効かないから、生肉があるなんて贅沢だからね」
「そうですか…、でもこの子の分で精いっぱいで」
 や、やばい。
 目立ってしまったかな?

 私は話を切り上げ宿屋に戻った。
 泊っていた人達がそれぞれ旅立っていく。
 さあ、私も行こうかな。
 宿を引き払いシルバーを連れ、ヤルコビッチさんの店に向かう。

 時間が早いせいか人が多い。
 でもいったい今は何時なのかな?
 時計が無いから時刻がわからない。

 店に着くと店先でヤルコビッチさんが、品物を出している所だった。
「おはようございます!ヤルコビッチさん」
「あ、おはようございます!スズカさん。少し待ってくださいね」
 そう言われ私は品出しをボ~と見ていた。

 この店はどうやらヤルコビッチさんと奥さんのリリーさん。
 そして従業員1人の店の様だ。
 まあこの広さなら3人居れば十分だよね。

 しばらく見ていると準備は終わったようだった。
「お待たせいたしましたスズカさん。さあ、店に参りましょうか」
 そうヤルコビッチさんに言われテナントを見に向かう。

 しばらく歩くと戸口4枚の1階建てで木造の建物が見えて来た。
「さあ、ここです。中へどうぞ」
 戸を開けてもらい中に入れてもらう。
 中に入ると2mくらいの空間があり、その奥にはカウンター台がある。

「ここは以前、私の店があったところです。今では手狭になったので引っ越しましたが、ここから我が商会が始まりました」
「そうなのですか。思い入れのある場所なのですね」
 カウンターの奥に入ると住居で、六畳くらいの部屋が一間に台所がある。

「いつでも貸すことが出来るように、掃除はちゃんとしていましたから」
「そうですか。でもお家賃はおいくらでしょうか?」
「15万と言いたいところですが、スズカさんなら10万で良いですよ」
「10万ですか?」
「実はここは店にしては小さく、住居としては広く借手が中々つかないのです」
 確かにそうかもしれないわ。

「それに本通りから道1本入っておりますので、人通りも多くはありません」

 ほう、そんなところを月10万で貸すと?