「これはいったい、何の騒ぎだ?」
2階から降りて来た2人組の内の1人が大きな声で聞いてくる。
別に騒いでませんけど。
至って静かです。
周りを見渡すとやっと、床からみんな立ち上がるとことだった。
ほらね。
「あぁ、ギルマス!!」
「ジェシー、これはどうしたことだ?説明してくれ」
ギルマスと呼ばれた立派な体格の男性が、ジェシーさんに聞いてくる。
「はい、実は…」
ジェシーさんは、起こったことを手短に話している。
ゴメスという冒険者がジョヴァンニさんやイングヴェさんに、言いがかりを付けてきたこと。
そして調教師登録に来ていた私に目をつけ迫ったこと。
使役されている魔物が危険を感じ、助けに飛び込んできたことを話している。
「そうか、それなら仕方があるまい。本来ならギルドでの揉めごとは処分が必要だが、違う意味での罰はもう受けているみたいだから今回はそれで許そう」
そう言うとゴメスのチビッた水たまりに目をやった。
「床を綺麗にしたら、ここを出ていけ!!」
「は、はい。すみませんでした!!」
ゴメスはヘコヘコしながら、清掃道具を渡される。
仲間から『チビりん』と馬鹿にされたゴメスは、その日以来この王都から姿を消したと言う。
「スズカさんと言ったね。嫌な思いをさせて悪かったね。私はここでギルドマスターをしているグリフィスだ」
「相川 涼香です」
「ほう、家名持ちなのか?君は貴族かね?」
「いいえ、違います」
「そうか、まあ人ぞれぞれ事情はあるからね」
そうグリフィスさんは言うと、1人でなにか納得をしていた。
「後は頼む。しかしAランククラスの調教師が我がギルドで登録してもらえるとは。今後を期待しているぞ」
「まあ、Aランクの調教師だなんて買いかぶりですよ」
「なにを言っているのかね?このシルバーウルフはすでに、高位のウォーグウルフに進化しているようだ」
「ウォーグウルフですか…」
私には魔物の違いなど判らなかった。
「ではよろしく頼むよ」
そう言いながらギルマスは2階に戻って行った。
「では改めて登録をお願いいたします」
「ではこの用紙に記入してください。書けなければ代筆いたしますが?」
「大丈夫です、書けますから」
失礼だな、文字が書けるかなんてさ。
私は大人だぞ!!
俺は獣紙皮に必要事項を書くことにした。
名前:相川 涼香
種族:人族
年齢:17歳
性別:女
使い魔:ウォーグウルフ
特技:
特技?
あぁ、ここは自己PRというやつね。
う~ん、特にないか。
取りあえず何か書いておこうか。
特技は裁縫と料理っと。
これでいいかしら?
「書けました。これでお願いします」
「はい、特技は…裁縫と料理ですか?」
「えぇ、そうです」
「そ、それは随分、家庭的ですね」
「いつでもお嫁に行けますから」
「そ、そうですね」
「そうですよ」
「 あははははは!! 」
ジェシーさんは私が書いた登録書を見ながら、ギルドカードを書いている。
手書きなんて大変ですね。
以前の世界ならコンピューターで、チャチャチャとできたのに。
「はいできました。このカードが身分証となりますので、無くさないでください。紛失されると再発行に5,000円かかります。また貴方が死亡された時の身元証にもなりますから、大切にしてください」
「はい、ありがとうございます」
「スズカさんはビーストテイマーですね」
「ビーストテイマーですか?」
「えぇ、そうです。何を使役しているかによって言い方が変わります」
「そうなのですか?」
ジェシーは慣れた言い方で、説明をしてくた。
きっと同じことを何百回も言っているんだろうな。
冒険者にはランクがありS、A~F。
上に行くほど報酬が多い代わりに難易度が高い。
登録時はFランクで1つ上のEランクまでの依頼を受けることが出来る。
失敗すると報酬の半分の違約金を払うことになるので、成功率を上げるためにもチームで活動する冒険者が多いそうだ。
依頼は毎朝、掲示板に張り出され早いもの勝ちとなる。
良い依頼を受けるため朝はとても混み、日が暮れる前にみんな戻ってくるので昼間の今の時間はギルドは空いているのだそうだ。
「また当ギルドは24時間開いております。魔物が現れ討伐が必要になった場合などは、ランクによっては強制参加になることもあります」
「そうですか!私が参加しても役には立たないと思いますけど。わかりました、ありがとうございました」
「じゃあ、俺達は行くぜ、スズカさん」
「あっ、今まで待っていてくれて、ありがとうございました。ゲオルギーさん」
「スズカさん。食堂を始めたら必ず伺いますから」
ジョヴァンニさんが、気の早い話を捨て来る。
「まだお店をやるかどうかは、わかりませんから」
「そんな~、勿体ないですよ。あんなに美味しいのに」
目を潤ませながら、イングヴェさんも私に訴えてくる。
「あはは、大袈裟ですね」
「じゃあ、スズカさん。まあ会おう!!」
「さようなら」
「じゃあ!!」
そう言いながら冒険者パーティ『燃える闘魂』の4人はギルドを出て行った。
「スズカさんはお料理が得意なのでしょうか?」
ジェシーが聞いてくる。
そんな訳がないでしょ。
「いいえ、ジョヴァンニさん達が言っていたのは、猫族と犬族用の食事のことです」
「猫族と犬族用のですか?」
「えぇ、彼らにすると美味しいみたいです」
「そうですか、獣人用の食事とは初めてです。普段、彼らは差別を受ける場合も多くて、入店できない店もあるそうです」
「酷い!そんなことがあるのなんて」
「ですから彼ら専用の食堂ができたらきっと喜ぶでしょう」
そんな差別があるんだ。
差別のない平和な国で生まれた涼香には、その辛さはわからなかった。
2階から降りて来た2人組の内の1人が大きな声で聞いてくる。
別に騒いでませんけど。
至って静かです。
周りを見渡すとやっと、床からみんな立ち上がるとことだった。
ほらね。
「あぁ、ギルマス!!」
「ジェシー、これはどうしたことだ?説明してくれ」
ギルマスと呼ばれた立派な体格の男性が、ジェシーさんに聞いてくる。
「はい、実は…」
ジェシーさんは、起こったことを手短に話している。
ゴメスという冒険者がジョヴァンニさんやイングヴェさんに、言いがかりを付けてきたこと。
そして調教師登録に来ていた私に目をつけ迫ったこと。
使役されている魔物が危険を感じ、助けに飛び込んできたことを話している。
「そうか、それなら仕方があるまい。本来ならギルドでの揉めごとは処分が必要だが、違う意味での罰はもう受けているみたいだから今回はそれで許そう」
そう言うとゴメスのチビッた水たまりに目をやった。
「床を綺麗にしたら、ここを出ていけ!!」
「は、はい。すみませんでした!!」
ゴメスはヘコヘコしながら、清掃道具を渡される。
仲間から『チビりん』と馬鹿にされたゴメスは、その日以来この王都から姿を消したと言う。
「スズカさんと言ったね。嫌な思いをさせて悪かったね。私はここでギルドマスターをしているグリフィスだ」
「相川 涼香です」
「ほう、家名持ちなのか?君は貴族かね?」
「いいえ、違います」
「そうか、まあ人ぞれぞれ事情はあるからね」
そうグリフィスさんは言うと、1人でなにか納得をしていた。
「後は頼む。しかしAランククラスの調教師が我がギルドで登録してもらえるとは。今後を期待しているぞ」
「まあ、Aランクの調教師だなんて買いかぶりですよ」
「なにを言っているのかね?このシルバーウルフはすでに、高位のウォーグウルフに進化しているようだ」
「ウォーグウルフですか…」
私には魔物の違いなど判らなかった。
「ではよろしく頼むよ」
そう言いながらギルマスは2階に戻って行った。
「では改めて登録をお願いいたします」
「ではこの用紙に記入してください。書けなければ代筆いたしますが?」
「大丈夫です、書けますから」
失礼だな、文字が書けるかなんてさ。
私は大人だぞ!!
俺は獣紙皮に必要事項を書くことにした。
名前:相川 涼香
種族:人族
年齢:17歳
性別:女
使い魔:ウォーグウルフ
特技:
特技?
あぁ、ここは自己PRというやつね。
う~ん、特にないか。
取りあえず何か書いておこうか。
特技は裁縫と料理っと。
これでいいかしら?
「書けました。これでお願いします」
「はい、特技は…裁縫と料理ですか?」
「えぇ、そうです」
「そ、それは随分、家庭的ですね」
「いつでもお嫁に行けますから」
「そ、そうですね」
「そうですよ」
「 あははははは!! 」
ジェシーさんは私が書いた登録書を見ながら、ギルドカードを書いている。
手書きなんて大変ですね。
以前の世界ならコンピューターで、チャチャチャとできたのに。
「はいできました。このカードが身分証となりますので、無くさないでください。紛失されると再発行に5,000円かかります。また貴方が死亡された時の身元証にもなりますから、大切にしてください」
「はい、ありがとうございます」
「スズカさんはビーストテイマーですね」
「ビーストテイマーですか?」
「えぇ、そうです。何を使役しているかによって言い方が変わります」
「そうなのですか?」
ジェシーは慣れた言い方で、説明をしてくた。
きっと同じことを何百回も言っているんだろうな。
冒険者にはランクがありS、A~F。
上に行くほど報酬が多い代わりに難易度が高い。
登録時はFランクで1つ上のEランクまでの依頼を受けることが出来る。
失敗すると報酬の半分の違約金を払うことになるので、成功率を上げるためにもチームで活動する冒険者が多いそうだ。
依頼は毎朝、掲示板に張り出され早いもの勝ちとなる。
良い依頼を受けるため朝はとても混み、日が暮れる前にみんな戻ってくるので昼間の今の時間はギルドは空いているのだそうだ。
「また当ギルドは24時間開いております。魔物が現れ討伐が必要になった場合などは、ランクによっては強制参加になることもあります」
「そうですか!私が参加しても役には立たないと思いますけど。わかりました、ありがとうございました」
「じゃあ、俺達は行くぜ、スズカさん」
「あっ、今まで待っていてくれて、ありがとうございました。ゲオルギーさん」
「スズカさん。食堂を始めたら必ず伺いますから」
ジョヴァンニさんが、気の早い話を捨て来る。
「まだお店をやるかどうかは、わかりませんから」
「そんな~、勿体ないですよ。あんなに美味しいのに」
目を潤ませながら、イングヴェさんも私に訴えてくる。
「あはは、大袈裟ですね」
「じゃあ、スズカさん。まあ会おう!!」
「さようなら」
「じゃあ!!」
そう言いながら冒険者パーティ『燃える闘魂』の4人はギルドを出て行った。
「スズカさんはお料理が得意なのでしょうか?」
ジェシーが聞いてくる。
そんな訳がないでしょ。
「いいえ、ジョヴァンニさん達が言っていたのは、猫族と犬族用の食事のことです」
「猫族と犬族用のですか?」
「えぇ、彼らにすると美味しいみたいです」
「そうですか、獣人用の食事とは初めてです。普段、彼らは差別を受ける場合も多くて、入店できない店もあるそうです」
「酷い!そんなことがあるのなんて」
「ですから彼ら専用の食堂ができたらきっと喜ぶでしょう」
そんな差別があるんだ。
差別のない平和な国で生まれた涼香には、その辛さはわからなかった。