「彼女さんですか?」
 冒険者ギルドの受付ジェシーさんがそう答える。

 え?私? 
 心の準備が…。

 昼の連続ドラマ『隣の奥さんは良く見える』
 第5話 一緒に暮らせば意外と同じ…。
 げふん、げふん、

「ち、違うんだ。このスズカさんが調教師(テイマー)登録をしたいそうだ」
 なんだ、違うのか。
 意気地なしね。
「そうですか。冒険者ギルドに登録は初めてですか?」
「はい、そうです」
調教師(テイマー)は珍しい職業ですが、従える魔物は何でしょうか?」
「え?たしかシルバーウ…「あ~臭せえな!臭せえ、臭せえと思ったら犬ころに猫野郎か。どおりで臭せえ訳だぜ!!」

 突然、大きな声が聞こえ、声のした方向を見るとテーブルに座っていた何人かいた男の内の1人が立ち上がった。
 男は身長が180cmはある30歳前後の筋肉ダルマだった。

「なんだ!ゴメスさん。言いがかりもいい加減にしてほしいな」
 ゲオルギーさんが迷惑そうな顔で、声を掛けて来た男に話しかける。
「俺は前から言ってるが獣人は嫌いなんだよ!!」
「そうは言うがこの街の3割はお前が言う異種族だ。そんな偏見は捨てるべきだ」
「なんだと!!昼間から女なんて連れ歩きやがって」
 そういうとゴメスと言われた男は、私に近付き腕を掴み引き寄せられた。

「痛い!!」
 と思ったら、痛くなかった。
 あれ?
「黒髪、黒い瞳か。珍しいな。しかも、こんないい女は見たことがねえぜ」
 そ、そんな~!!
 異世界転移万歳!!
 遂に私にもモテ期が!!!

「この野郎!スズカさんを離せ」
「そうだ。スズカさんに乱暴をするな!!」
 ゲオルギーさんやアレクサンデルさんが、剣に手を掛け険悪な雰囲気になる。

「スズカさん、今助けますからね」
 ジョヴァンニさんが心配そうな顔で私に声を掛ける。
 あ、そうか。ここはひとつ。
「あ~、たすけて~。痛いわ~、離して~」
 私は棒読みで取りあえず助けを求める。

「こいつは俺の女にする」
 ゴメスと言う男がいきなりそう叫ぶ。
 なんですって?
 私は困惑する。この男は臭い、しかもゴリラ顔だ。

「「 いやだァ~!!(ぶ男は!!) 」」
 心の底からそう叫んだ。

 その時だった!!

〈〈〈〈〈 ワオォ~~~~~~ン!! 〉〉〉〉〉

 あの鳴き声はシルバー?

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 ズゥ-------------ン!!
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「わっ!!」
「きゃ~!!」
「わっ?!」
「な、なんだ?!これは!!」
 ギルドの中で立っていた人達が、よろけたり座り込んでいる。

「 ガルルルルル… 」

 見ると幅3mはあるギルドのスイングドアを、窮屈(きゅうくつ)そうに押し開けながらシルバーが入って来た。

 なにか嫌なことをされたのかしら?

「シルバー、どうしたの?」
 私は間の抜けた顔で声をかけていた。

◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 私はシェイラ国の王都、ファグネリアにある冒険者ギルドを預かるギルドマスター、グリフィスだ。
 昼頃、2階の執務室で副ギルドマスターのクオンと、打ち合わせをしていると突然、禍々(まがまが)しいばかりの強大な魔力を感じた。
 私はこれでも以前はSランク冒険者だっだ。
 色んな魔物を討伐してきたが、これ程の魔力を放出できるのは高位の魔物だ。
 それも大隊(約500名)規模で討伐するほどの魔物だ。

 なぜ突然、魔力が街中から?
 いったい警備の者は何をしていたのか?
 しかもギルドの1階から魔力を感じるのだ?

 このままでは、この街は滅ぶ。
 私は冷や汗をかきながら、使い慣れた剣を持ちクオンと部屋を後にした。