商人のヤルコビッチさん、冒険者のゲオルギーさんとアレクサンデルさん。
 ジョヴァンニさんとイングヴェさん達は、パンにジャムを付け更にハチミツを堪能し満足そうな顔を浮かべている。

「スズカさん、本当に宜しいのでしょうか?」
 ヤルコビッチさんが申し訳なさそうにしている。
 小麦で作ったパンは高く庶民の口には中々入らない。
 砂糖や果物は高級品となり、ジャムは高価な物だそうだ。
 そしてハチミツはお金を積んでも、手に入らないこともある貴重品だという。
 それを1枚500円で、惜しげもなく堪能させてもらっているのだ。
 申し訳なく思うのだろう。

「いいですよ、別に」
 そう私は応え、これからのことを考える。
 明日は街に向う。
 そこで生活できるのか不安でいっぱいだ。

「スズカさんは王都に行ったら調教師(テイマー)で生活されるのでしょうか?」
「いいえ、私には魔物討伐で生活していくのは無理だと思います。できれば商品を売って生計を立てて行きたいと思います」
「ではいかがでしょう。まずは私にそのジャムとハチミツを売りませんか?」
「ジャムとハチミツですか?」
「えぇ、そうです。どんなに良いものを持っていても、スズカさんには売る伝手(つて)がないのでは?」
「そう言われて見ればそうです」

「では私の店経由で販売してみてはいかがでしょうか?ジャムなら1缶5万円でイチゴ、ブルーベリーをそれぞれ2缶ずつ購入いたします。ハチミツは値段が付けられません。そのため、オークションに出そうと思います」
「ジャムが1缶5万円ですか」
「少なかったでしょうか?」
「いいえ、そう言う訳ではありません。逆です」
「そんなことはありませんよ。ガラス瓶に入った物なら付加価値が付き、貴族や富裕層の人達が買ってくれるでしょう」
「それは良かった」

「だから危険なのです」
「えっ、危険ですか?」
「そうです。欲しくてもお金を積んでも手に入らないハチミツが、こんな高価なガラス瓶に入っているのです。狙われる可能性もありますから」
「それほどまでのことなのでしょうか?」
「勿論です。ハチミツは古くから、美容薬や病気にも効くと言われています。それを欲しがる人はたくさんいるのですよ。ですからあなたは表に出ないほうが良いと思います」
「そうですか。分かりました」
「では王都に着きましたら、私の店で受け取りましょう。お支払いはその時に」
「えぇ、お願いします」


「クウ~ン」
 これからのことを考えていると、銀色のワンコが私を慰めるように舐めてくる。
「あ~。もう。この子ったら」
 そう言えばまだこの5匹に、名前も付けていなかったわ。
 明日で4匹とはお別れなのに…。
 5匹いるからレッド、ブルー、イエロー、ピンク、グリーンはどうかしら?
 戦隊モノか?!

 でも銀色が無いね。
 そう言えばこの子達の性別はどうなのかしら?
 私はそう思いワンコの尻尾を持ち上げ付近を確認してい良く。
 きゃ~やめて~、なんてね。

 どうやら銀色ワンコと3匹はオスで、残りの1匹がメスみたい。

 仕方がないわ。グリーンの代わりに銀色ワンコはシルバーで、残りの4匹はレッド、ブルー、イエロー、ピンクにしましょう!

「みんなに名前を付けたわ。あなたは銀色だからシルバー。残りのあなた達はレッド、ブルー、イエロー、ピンクよ。いいわね?」
『『え~、俺達全員、兄貴以外は白色だぜ~』』
()()?残りのあなた達はレッド、ブルー、イエロー、ピンクよ!!わかった?」
『へ、へい判りました。レッド、ブルー、イエロー、ピンク、そしてシルバー!!』
「5匹揃ってゴ…「あの~、スズカさん。なにを言っているのですか?」

 あ、いえ~。
 私はポーズを取ろうとしていた両腕を下げた。
 アフレコですけど…。
 そんな~、痛い子を見る目で私を見ないで…。

「見張りは俺達冒険者の4人で交代でやりますから。ヤルコビッチさんとスズカさんは、もう寝てください」
「すみません、ゲオルギーさん。あぁ、そうだ。お前達、お前達も交代で見張りをしてね。何かあれば私達を守ってね」
 そうワンコ達に話しかける。

『ワオ~~~ン!!』『ワオ~~~ン!!』『ワオ~~~ン!!』
 『ワオ~~~ン!!』『ワオ~~~ン!!』

 それに答えるようにワンコ達が吠える。

 私は慣れない世界と緊張でシルバーに寄り掛かり、あっと言う間に眠りについた。