そして
「やめろアレックス!」リアムの声が私達に届き、声の元を見ると黒い軍服を着たリアムが黒いペガサスの背に乗って、私達の真横に並んでいた。
「リナから離れろ!」
 こんな怖い顔をしたリアムを見るのは初めてだった。長い髪と黒いマントをなびかせ、ヘーゼルの瞳は怒りに溢れて、威圧感のある低い声は誰もが委縮してしまうだろう。
 でも王は違った。リアムの登場に楽しそうに微笑んでいた。アレックスはどこまでも優雅な王様で、リアムはどこまでも闘う騎士団長だった。
「リナから手を引け」
「王に命令をするのか?」
「離れろ」
「私に忠誠を尽くし、自分の命に代えても私を守るのではなかったのか?」
「リナは誰よりも大切な女性だ」
「リアム……遅い」
 アレックスはため息をしながらそう言って、短剣を持っている右手を優雅に高く上げた。

 怖すぎると声も出ない。あぁここで私の人生終わってしまうんだ異世界で終了ってどーよ。カレーもスタバも連ドラもさようなら。いや最後がドラゴンの背中で王に短剣で刺されるって、想像もつかない終わり方だった。秒単位の短い時間でグルグルと色んな事を思ってしまう。これが死の一歩手前の走馬灯ってやつなのね。横を見るとリアムと目が合った。リアムは半分泣きそうな顔で何かを叫んでる。冷酷騎士団長様に泣きそうな顔は似合わないよ。ラストにいいもの見せてもらったかも。

 リアム
 本気で本当にすっごく
 大好きだった。
 知らないうちに涙があふれる。